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第10号  2004/02/09
  ▼  まえがき
  ▼  これまでの話しのまとめ
  ▼  ソフトウェア開発委託契約の契約と実務
  ▼  新しいソフトウェア開発委託モデル契約
  ▼  新たな契約類型の検討を
  ▼ 次回以降の予告

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  まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と
契約している個人事業主の方々に配信しています。
感想をお持ちなら是非返信してください。


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  [5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?]
 これまでの話しのまとめ
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これまでの話しをまとめてみましょう。

(1)低価格化・短納期化の圧力
経済のグローバル化が企業間の低価格化・短納期化競争を激化させます。
その結果としてシステム開発予算が削減され、このことがシステム
開発会社に対する直接的な低価格化・短納期化圧力となります。

また、技術の標準化はシステム開発会社間の競争を促します。
これがシステム開発会社に対する間接的な低価格化・短納期化圧力
となります。

(2)設計は容易に圧縮できない
設計フェーズは容易に圧縮できるものではありません。
その理由は二つあります。
一つは、ソフトウェアの設計作業というものが、本質的に難しい
ものであるという技術的な理由です。

もう一つは下記のような非技術的な要因です。
・ユーザは自分が何をしたいのか、自分でも分かっていません。
・だから、少しでも動くものが出てくると、欲が出てきて
 次々と新しい仕様を思いつきます。
・ユーザの担当者は自分で責任を取りたくないので、なかなか
 仕様を確定しません。

上記(1)(2)の帰結として、システム開発は、
「設計と製造とが極限にまでオーバーラップした漸増的開発」
という様相を呈します。


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  [5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?]
 ソフトウェア開発委託契約の契約と実務
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現実は「設計と製造とが極限にまでオーバーラップした漸増的開発」
という方向に進んでいるのに、契約形態の進歩はそれに追いついて
いません。

私は数ヶ月前下記の本を購入しました。

 「ソフトウェア開発委託契約の契約と実務」
   (社)情報サービス産業協会 法的問題委員会契約部会 編
   商事法務 発行
   2002年7月24日 初版第1刷

本の帯に「Web対応・分散処理型モデル契約の解説」と書かれて
いたので期待して読み始めたところ、初めの方に下記の問題提起が
ありました。

(1)ユーザのニーズとシステム仕様が過不足なく合致している
 ということを誰がどのようにして確認できるのか?
(2)一度、決めた仕様がユーザニーズと合致していなかった場合、
 その責任の所在はどこにあるのか?
(3)仕様を決める作業が遅れ、システムの納入が遅れた場合、
 ユーザとベンダの責任はどのようになるのか?
(4)システムの開発をベンダに委託する場合、納入されたシステムの
 受入れ検査では、何を基準として検査が行われるのか?

私ならさらに下記を追加します。
(5)ベンダが仕様の確定を見込んで先行的に製造作業をスタート
 させたが、目論見が外れて仕様が変わり、手戻りが発生し、
 コストと開発時間に関する損失が発生した場合、その費用は
 誰が負担するのか?

これらは全て非常に重要な問題です。

期待を膨らませて読み続けましたが、解決方法は「システム提案書や
システム仕様書をしっかりと書け」とか「システム仕様検討会を開催し、
しっかりと議事録を残せ」とか言い古されたことばかりで、目新しい
ものはありませんでした。


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  [5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?]
 新しいソフトウェア開発委託モデル契約
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第2部には「新しいソフトウェア開発委託モデル契約」が掲載されて
いました。
そこでモデルケースとしてるプロジェクトの開発手法はスパイラル型
またはプロトタイプ型、スケジュールは下記を想定しています。

@1月〜2月 調査・システム仕様検討
A2月末   システム仕様の確定・承認
B3月〜4月 業務Aの設計〜単体テスト
C5月上旬  業務Aの試使用、ユーザ確認
D5月    業務Bの設計〜単体テスト
E6月第1週 業務Bの試使用、ユーザ確認
F6月下旬  総合試験

しかし、これは下記の点で現在のシステム開発の実態とあまりにも乖離
しています。

・Aでシステム仕様が承認されれば、仕様変更はない、あるいは
 仕様変更として追加工数を請求できることを前提としている。
 (実際にはこの段階で仕様が確定・承認されることはない。)
・CEの「試使用、ユーザ確認」をプロトタイプと見なしている。
 つまりプロトタイプによりシステム仕様は影響を受けない。
 (実際にはプロトタイプは仕様確定に用いられる。)
・BDをスパイラルと見なしている。つまりスパイラルにより
 システム仕様は影響を受けない。
 (実際にはシステム仕様もスパイラルにより変化する。)


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  [5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?]
 新たな契約類型の検討を
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著者自身もその乖離を感じたのか、下記のようなことも書いています。
「現行の契約形態にあてはめて、さまざまな手当を契約条項中に
盛り込むことは当然であるが、さらに一歩、踏み込んで委任や委託
といった従来からの契約類型ではなく、新たな契約類型を模索する
ことも、今後に残された検討課題ではないかと思われる。」

日経コンピュータなどの雑誌でも、せいぜい「ベンダーとの契約は
請負と準委任のどちらがいいか」といった記事ががほんの少し載る程度で、
「プロトタイピングや漸増的開発に適する契約類型は何か」
についてのまともな議論は行われていません。

様々な開発方法論や技術論は巷に溢れかえっていますが、上記
(1)〜(5)のような極めて基本的な問題提起についての検討は
ないがしろにされています。
開発方法論や技術論は「うまく開発するにはどうしたらよいか」
という理論であり、責任の所在を確定する理論ではありません。
したがって、開発方法論や技術論は上記(1)〜(5)の問題に対して、
明確な回答を提供することができません。

著作権についての議論はよく行われるのに、システム開発会社にとって
より切実な「工事請負を想定した従来の請負契約が現在のシステム
開発に合致しているのか」という問題についての議論は皆無です。

その理由は下記が考えられます。
・法律家がシステム開発の現状を知らない。
・請負でも準委任でもない新しい契約類型を考え出すことは容易ではない。
・技術者は問題を技術で解決すべきだと考えていて、契約の文言で
 解決することを潔しとしない。

私は、契約意識の高い欧米でどのような契約がなされているのか
知りたいと思っていますが、そのようなことを書いた本が見当たりません。

そこで、先週、私は慶が入っている羅針盤21という業界団体で、
「ソフトウェア開発における新しい契約類型」を研究テーマとして
取り上げることを提案しました。



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  次回以降の予告
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 2/16 5年後、システム開発の仕事はどのようになっているか?
 2/23 5年後、会社組織はどのようになっているか?

      次号は、2月16日発行予定です。乞うご期待!!


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発行:
株式会社 慶
 代表取締役  蒲生 嘉達
y_gamou@kei-ha.co.jp http://www.kei-ha.co.jp
TEL:03-5951-8490  携帯:090-1258-6347


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