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第100号  2005/11/07
  ▼  まえがき
  ▼  [ソフトウェア振替という麻薬] 倒産した某ベンチャー企業
  ▼  [ソフトウェア振替という麻薬] 某ベンチャーの貸借対照表
  ▼  [ソフトウェア振替という麻薬] 資産の40%がソフトウェア
  ▼  [ソフトウェア振替という麻薬] 資本金ではなく純資産で判断すべき
  ▼  [ソフトウェア振替という麻薬] 次回以降の予告


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  まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。


・第97号から「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズを連載しています。

・「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズを最初から読みたい方は、
 http://www.kei-it.com/sailing/back_furikae.html を参照してください。

・バックナンバーはブログでも公開しています。
 ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/



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  [ソフトウェア振替という麻薬] 倒産した某ベンチャー
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慶は平成13年9月から平成14年8月にかけて、継続的に、某ビジネス
モデル系ベンチャー企業(以下F社と呼びます)からシステム請負開発
を受注しました。
内容はF社が提供する予定の新サービスの開発でした。

平成14年3月までに約2,000万円を受注し、それについては全額支払われ
ましたが、平成14年4月以降は支払いが遅れたり、口頭では注文して
おきながら、正式な注文書の発行が遅れたりするようになってきました。

詳しい経緯は省きますが、平成14年9月にF社のS社長が行方をくらまし、
F社は事実上倒産しました。
そのため、慶はかなりの額の貸し倒れ損失を蒙りました。



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  [ソフトウェア振替という麻薬] 某ベンチャーの貸借対照表
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そのすったもんだの過程で、私は平成14年5月末のF社の貸借対照表を
入手しました。
それを若干簡略化したものを
http://www.kei-it.com/sailing/pdf/100fb1.pdf
に示します。

資本金は5,000万円ですが、剰余金が-5,242万円なので、資本合計は
242万円のマイナスになっています。

それを埋めるために、借入れが膨らんでいます。
一年以内返済予定長期借入金が840万円、長期借入金1,090万円、
さらに役員短期借入金が3,078万円あります。

銀行からの融資ではなく「役員短期借入金」となっていることから、
親戚・知人から金を借り、さらには金利の高い金融業者(いわゆる街金)
から個人で借りているF社のS社長の姿が浮かび上がってきます。

貸借対照表の数字もこのようにひどいものでしたが、S社長は
「他に帳簿に付けていない4,000万円の借入がある」と言っていました
から、実態はもっと悲惨でした。



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  [ソフトウェア振替という麻薬] 資産の40%がソフトウェア
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さらに注目すべきことは、資産合計5,001万円の中で、ソフトウェアが
2,005万円も占めているということです。
資産合計の40%に当たります。
そのソフトウェアの大半は慶が請負ったシステムです。

もしもソフトウェアを資産に計上しなければ、F社の貸借対照表は
http://www.kei-it.com/sailing/pdf/100fb2.pdf
のようになります。

資本合計は-2,247万円となり、資産合計は2,995万円に減ります。
これではあまりにも体裁が悪いので、F社はソフトウェアを資産
として計上したのでしょう。

多くの人が「資本金5,000万円、資産合計5,001万円」という
立派な外見と、S社長の夢を追いかけるような姿勢に騙されました。

それでも、そのソフトウェア資産が本当に利益を生み出すもの
だったら、まだ救いようがあります。
しかし、F社を含め、ほとんどのビジネスモデル系ベンチャーの
ソフトウェア資産は利益を生み出せません。

また、仮に多少利益を生み出せたとしても、そのソフトウェア資産の
耐用年数は非常に短いのです。
ビジネスモデル系ソフトウェアの耐用年数は、アイデアの耐用年数
だからです。1年もたてば時代遅れになってしまいます。

その一方で毎年、減価償却費が経費を膨らませます。
「減価償却費は会計上の数字に過ぎない、実際に金は出て行かない」
ということは、半分は正しいのですが、半分は間違えています。
自己資金で開発したならそのとおりですが、実際には開発するために
多額の借金をしているのですから、減価償却費に近い金額の現金が
借入れ返済のためにどんどん流出していくのです。

貸借対照表の科目で言うなら、負債と現金預金が毎月減っていきます。



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  [ソフトウェア振替という麻薬] 資本金ではなく純資産で判断すべき
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F社事件から、会社を資本金で判断してはならないということが
分かります。
純資産(資本合計のこと)で判断すべきです。

F社は資本金5,000万円でしたが、純資産は-242万円でした。

また、資産の中でソフトウェア資産が大きい会社(特にビジネスモデル系
ベンチャー)はその部分を引いて見なければ財務の実態はつかめません。

F社の純資産はソフトウェア資産を引くと、-2,247万円となりました。

しかし、資本金はどの会社も公開していますが、純資産やソフトウェア
資産は公開していません。
そのため、実態は資金ショート寸前の会社も外見は立派に見える
ことがあります。

一見好調だったビジネスモデル系ベンチャーが、突然倒産したり、
大企業に身売りしたりする理由はここにあります。



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  [ソフトウェア振替という麻薬] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・米国ソフト会社は減価償却しない
・資本金
・増資


次号は、11月14日発行予定です。

乞うご期待!!



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