メルマガ ソフトウェア業界 新航海術 |
ホーム |
バックナンバー |
2010年のシステム開発 |
航海術 |
||
バックナンバーの全文検索 全バックナンバー(古い号が先) 全バックナンバー(新しい号が先) ●:5年後のシステム開発 ●:ブルックスの法則 ●:グーグルの衝撃 ●:保存できないエディタ |
●:製造業の呪縛 ●:請負と派遣 ●:永久運動の設計 ●:大きくなるか、小さくなるか ●:ゴーイング・コンサーン ●:金持ちソフト会社、貧乏ソフト会社 |
●:経営の基準となる数字 ●:借入れと連帯保証 ●:ソフトウェア振替という麻薬 ●:賃金決定の仕組み ●:SE・プログラマの資質 ○:その他 |
************************************************************** _/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/ ************************************************************** 第100号 2005/11/07 ▼ まえがき ▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 倒産した某ベンチャー企業 ▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 某ベンチャーの貸借対照表 ▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 資産の40%がソフトウェア ▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 資本金ではなく純資産で判断すべき ▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 次回以降の予告 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= まえがき *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。 ・第97号から「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズを連載しています。 ・「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズを最初から読みたい方は、 http://www.kei-it.com/sailing/back_furikae.html を参照してください。 ・バックナンバーはブログでも公開しています。 ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= [ソフトウェア振替という麻薬] 倒産した某ベンチャー *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 慶は平成13年9月から平成14年8月にかけて、継続的に、某ビジネス モデル系ベンチャー企業(以下F社と呼びます)からシステム請負開発 を受注しました。 内容はF社が提供する予定の新サービスの開発でした。 平成14年3月までに約2,000万円を受注し、それについては全額支払われ ましたが、平成14年4月以降は支払いが遅れたり、口頭では注文して おきながら、正式な注文書の発行が遅れたりするようになってきました。 詳しい経緯は省きますが、平成14年9月にF社のS社長が行方をくらまし、 F社は事実上倒産しました。 そのため、慶はかなりの額の貸し倒れ損失を蒙りました。 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= [ソフトウェア振替という麻薬] 某ベンチャーの貸借対照表 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= そのすったもんだの過程で、私は平成14年5月末のF社の貸借対照表を 入手しました。 それを若干簡略化したものをhttp://www.kei-it.com/sailing/pdf/100fb1.pdf に示します。 資本金は5,000万円ですが、剰余金が-5,242万円なので、資本合計は 242万円のマイナスになっています。 それを埋めるために、借入れが膨らんでいます。 一年以内返済予定長期借入金が840万円、長期借入金1,090万円、 さらに役員短期借入金が3,078万円あります。 銀行からの融資ではなく「役員短期借入金」となっていることから、 親戚・知人から金を借り、さらには金利の高い金融業者(いわゆる街金) から個人で借りているF社のS社長の姿が浮かび上がってきます。 貸借対照表の数字もこのようにひどいものでしたが、S社長は 「他に帳簿に付けていない4,000万円の借入がある」と言っていました から、実態はもっと悲惨でした。 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= [ソフトウェア振替という麻薬] 資産の40%がソフトウェア *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= さらに注目すべきことは、資産合計5,001万円の中で、ソフトウェアが 2,005万円も占めているということです。 資産合計の40%に当たります。 そのソフトウェアの大半は慶が請負ったシステムです。 もしもソフトウェアを資産に計上しなければ、F社の貸借対照表はhttp://www.kei-it.com/sailing/pdf/100fb2.pdf のようになります。 資本合計は-2,247万円となり、資産合計は2,995万円に減ります。 これではあまりにも体裁が悪いので、F社はソフトウェアを資産 として計上したのでしょう。 多くの人が「資本金5,000万円、資産合計5,001万円」という 立派な外見と、S社長の夢を追いかけるような姿勢に騙されました。 それでも、そのソフトウェア資産が本当に利益を生み出すもの だったら、まだ救いようがあります。 しかし、F社を含め、ほとんどのビジネスモデル系ベンチャーの ソフトウェア資産は利益を生み出せません。 また、仮に多少利益を生み出せたとしても、そのソフトウェア資産の 耐用年数は非常に短いのです。 ビジネスモデル系ソフトウェアの耐用年数は、アイデアの耐用年数 だからです。1年もたてば時代遅れになってしまいます。 その一方で毎年、減価償却費が経費を膨らませます。 「減価償却費は会計上の数字に過ぎない、実際に金は出て行かない」 ということは、半分は正しいのですが、半分は間違えています。 自己資金で開発したならそのとおりですが、実際には開発するために 多額の借金をしているのですから、減価償却費に近い金額の現金が 借入れ返済のためにどんどん流出していくのです。 貸借対照表の科目で言うなら、負債と現金預金が毎月減っていきます。 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= [ソフトウェア振替という麻薬] 資本金ではなく純資産で判断すべき *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= F社事件から、会社を資本金で判断してはならないということが 分かります。 純資産(資本合計のこと)で判断すべきです。 F社は資本金5,000万円でしたが、純資産は-242万円でした。 また、資産の中でソフトウェア資産が大きい会社(特にビジネスモデル系 ベンチャー)はその部分を引いて見なければ財務の実態はつかめません。 F社の純資産はソフトウェア資産を引くと、-2,247万円となりました。 しかし、資本金はどの会社も公開していますが、純資産やソフトウェア 資産は公開していません。 そのため、実態は資金ショート寸前の会社も外見は立派に見える ことがあります。 一見好調だったビジネスモデル系ベンチャーが、突然倒産したり、 大企業に身売りしたりする理由はここにあります。 =*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= [ソフトウェア振替という麻薬] 次回以降の予告 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 次号以降は次のようなテーマで書く予定です。 ・米国ソフト会社は減価償却しない ・資本金 ・増資 次号は、11月14日発行予定です。 乞うご期待!! *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 本メルマガについて *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。 創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、 本メルマガのコンセプトは「読みものとしても面白い慶の事業計画」であり、 目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。 したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び 慶と契約している個人事業主を想定しています。 彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。 また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、 ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、 第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する ことにしました。 「まぐまぐ!」での読者数は平成17年10月30日現在、436名です。 本メルマガの内容に興味を持つであろう方をご存知なら、是非 本メルマガの存在を教えてあげてください。 (以下をそのまま転送するだけです。) --------------------------------------------------- 【お勧めメルマガ ソフトウェア業界 新航海術】 ⇒ http://www.mag2.com/m/0000136030.htm または http://www.kei-it.com/sailing/ -------------------------------------------------- このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して 発行しています。配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000136030.htm (但し、web@kei-ha.co.jp it@kei-it.com には直接配信しています。) 発行者Webサイト: http://www.kei-it.com/sailing/ (発行者Webサイトではバックナンバーの全文検索も可能です。) バックナンバーはブログでも公開しています。 ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ -------------------------------------------------- 発行: 株式会社 慶 代表取締役 蒲生 嘉達 y_gamou@kei-ha.co.jp Webシステム開発事業部 http://www.kei-ha.co.jp ITサービス事業部 http://www.kei-it.com 人材コンサルティング事業部 http://www.k-bank.jp TEL:03-5951-8490 ☆ コピーや配布をされる時はご一報ください ☆ ☆ このメルマガに対するご感想・ご質問はこちらにお寄せください。 ☆ office@kei-ha.co.jp |
|
(c)Copyright Kei Co.,Ltd All Right Reserved |