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第102号  2005/11/21
  ▼  まえがき:新シリーズ開始
  ▼  [製造業かサービス業か] 本シリーズで書きたいこと
  ▼  [製造業かサービス業か] 上司が部下に言う定番の一つ
  ▼  [製造業かサービス業か] 違いは「商品の有無」
  ▼  [製造業かサービス業か] 注文住宅を建てる工務店もサービス業?
  ▼  [製造業かサービス業か] 「製造業である」という主張も健在
  ▼  [製造業かサービス業か] 次回以降の予告


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  まえがき:新シリーズ開始
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。


第101号( http://www.kei-it.com/sailing/101-051114.html )で
次の予告をしました。


> 米国のソフトウェア会社が、それもPC系ソフトウェア会社に限って、
> 儲かっているか否かに関わらず、自社のソフトウェアを減価償却
> しないのなら、このことはもっと本質的で重大な問題を含んでいる
> のではないでしょうか?
> 
> 「ソフトウェアの価値をどのように考えるのか」という問題を・・・。
> 
> 次号以降で、「ソフトウェアの価値とは何か?」というテーマにまで
> 踏み込みます。


これは非常に大きなテーマなので、新シリーズ「製造業かサービス業か」を
立ち上げます。


「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズでは、まだ、「資本金」
「増資」「新会社法の1円起業」などについて書きたいことが残って
いますが、しばらくお休みします。



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  [製造業かサービス業か] 本シリーズで書きたいこと
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「製造業かサービス業か」シリーズでは、次のようなことを書く予定です。

(1)「ソフトウェア産業は製造業である」という主張も健在。

(2)パッケージソフトは製造業かサービス業か?

(3)米国ですら、プログラマの給料はパッケージの販売価格で
   決まっていない。

(4)デルはPC製造ですら、流通業、サービス業に変えた。

(5)広告が主たる収入源になる時代のソフトウェア会社の姿。

(6)オープンソース(つまり製造が無料の世界)との関係。



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  [製造業かサービス業か] 上司が部下に言う定番の一つ
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「君たちはソフトウェア産業は製造業だと思っているだろうが、
本当はサービス業なんだよ。」

私がこの業界に入った20数年前から、この言葉は、上司が部下に言う
言葉の定番の一つでした。

この場合、上司が言いたいことは次のようなことです。

・顧客満足が目的であって、良いプログラムを作ること自体が目的ではない。
・顧客とのコミュニケーションを大切にしなければならない。
・オタクっぽいマニアックなプログラマではなく、ビジネスマンであれ。
・自己満足的な職人芸の追求に走ってはいけない。


しかし、これらは、サービス業であるが故の要請でしょうか?
製造業なら、顧客満足を軽視してもよいのでしょうか?
製造業なら、自己満足的な職人芸に走ってもよいのでしょうか?


「顧客満足が目的」という点では、製造業もサービス業も同じはずです。
街角の理髪店でも、松下電器やトヨタのようなメーカーも消費者の満足
がなければ成り立ちません。



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  [製造業かサービス業か] 違いは「商品の有無」
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製造業とサービス業の違いは、「顧客満足を目的とするか否か」ではなく、
「商品の有無」です。

例えば、我々が自動車を買う場合、顧客が買うものは、自動車という
商品が主で、付随するサービスは従です。
自動車そのものに商品価値があり、その自動車を買った人はそれを
中古市場で売ることもできます。

一方、理髪店は髪を切るというサービスで対価を得ているのであり、
納品物はありません。

納品物があるサービス業もあります。
例えば、調査を依頼された探偵は、最終的には報告書や証拠写真を
納品物とするでしょう。
しかし、それらには顧客にとっての(調査対象の相手を問い詰める際の)
「利用価値」はありますが、商品としての「販売価値」はありません。

また、調査結果は「分かりませんでした」となることもあり得ます。
しかし、その場合でも、利用者は調査というサービスに金を払います。
最初から調査結果の仕様があるわけではないからです。



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  [製造業かサービス業か] 注文住宅を建てる工務店もサービス業?
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「ソフトウェア産業は製造業ではなく、サービス業である」という主張は、
コンサルタントがコンサルタント契約によって調査やアドバイスをする場合、
ネットワークエンジニアやプログラマが準委任契約で常駐作業をする場合
には、異論はないでしょう。

しかし、システム請負開発の場合は、それほど自明ではありません。

サービス業派は次のように言うでしょう。
「システム請負開発の仕事とは、顧客のニーズを汲み出し、顧客と
相談しながら仕様を詰め、実装し、納品後はメンテナンスするという
一連の作業です。
この複雑で多岐にわたる作業の中で、納品プログラムが占める割合は
大きなものではありません。」

しかし、これに対しては、次の反論が考えられます。

「例えば、注文住宅を建てる工務店もオーダーメイドの仕立屋も、
顧客のニーズを汲み出し、顧客と相談しながら仕様を詰め、実装し、
納品後はメンテナンスしています。
それらも、みんなサービス業なんですか?」


経済学では、商品としての販売価値のあるものを消費財と呼び、
道具として利用価値のあるものを中間財と呼びます。

注文住宅を供給する工務店も、オーダーメイドの仕立屋も、
システム請負開発会社も、契約当時に仕様が存在した中間財を
製造して納品しています。



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  [製造業かサービス業か] 「製造業である」という主張も健在
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「我々は中間財の製造という『モノ作り』に責任と誇りを持っている。
だから、製造業なんだ」という主張は十分に成り立ち得ます。

例えば、インターネットで検索すれば、下記のような記事が幾つも
出てきます。


・日本総合システム株式会社のホームページより
> 当社はソフトウェア業界で「真の物創りのできる企業」として確固たる
> 地位を占めることを目指しています。一般にはソフトウェア産業は
> サービス業と言われますが,当社は製造業と考えています。
> ( http://saiyou.nssys.co.jp/html/gyoumu-annai.html


・「硬派のホームページ」より 
> ソフト産業も、製造業と同じはず。確かに、メーカに属していない
> ソフト開発組織の場合は、産業分類では、サービス業に分類される。
> だが、「もの作り」であることには変わりはない。
> ソフトウェアの設計や開発は、どう見ても「サービス業」ではおかしい。
> 部品のチップや歯車を作るのは製造業で、同じように部品の一つである
> 「ROM」チップに納まるソフトを作る会社(組織)が「サービス業」
> というのはおかしい。
> 製造業であるのなら、製造技術を競う必要がある。
> 製造業でやって来たように、ソフト産業でもそれをやればよい。
> ( http://homepage3.nifty.com/koha_hp/Else/Head0207.html )

 
これらの堂々たる主張にサービス業派は、果たして反論できるでしょうか?

また、パッケージソフトウェア会社は中間財ではなく、消費財を
売っています。
「パッケージソフトウェア会社は製造業ですか?それとも、
サービス業ですか?」という質問に、サービス業派は答えられる
でしょうか?



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  [製造業かサービス業か] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・製造業派への反論。
・パッケージソフトは製造業かサービス業か?
・米国ですら、プログラマの給料はパッケージの販売価格で決まっていない。


次号は、11月28日発行予定です。

乞うご期待!!



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