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第106号  2005/12/19
  ▼  まえがき
  ▼  [製造業の呪縛] パッケージがプログラマの職を奪うことはない
  ▼  [製造業の呪縛] プログラマの労働時間のほとんどはインハウス開発
  ▼  [製造業の呪縛] どこに焦点を絞るか
  ▼  [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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  まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

・第102号から「製造業の呪縛」シリーズを連載しています。

・「製造業の呪縛」シリーズを最初から読みたい方は、
 http://www.kei-it.com/sailing/back_maker_service.html 
 を参照してください。

・バックナンバーはブログでも公開しています。
 ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/



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  [製造業の呪縛] パッケージがプログラマの職を奪うことはない
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これまで「製造業の呪縛」シリーズで考察してきたことを基にして、
いくつかの未来予測をしてみましょう。

そのうちの一つは、「パッケージ製品が、請負開発をしている
プログラマの職を奪うことはない」という予測です。

製造業の場合、工場で大量生産された製品が、手作業の職人を駆逐
しました。
コンピュータソフトウェアのパッケージ製品も大量に複製される製品
ですが、それによってプログラマの職が奪われるということは、
これまでも無かったし、今後もあり得ません。


確かに、我々が日常的に使うソフトウェアのほとんどはパッケージ
製品です。
MS-Windows、MS-Office、ブラウザ、メーラ、グループウェア、
会計ソフト、給与計算ソフト、画像編集ソフト、CADソフト、
データベースソフト、データ分析ソフト、・・・など。

今から20年前、世界中で動いているプログラムの90%は汎用機で動く
社内システムでしたが、今ではPC上のプログラムを含めると、
世界中で動いているプログラムの90%以上はパッケージ製品だと
言っても過言ではないでしょう。

今後さらにERP、SCMなどの大規模なパッケージ製品が普及すると、
企業の基幹システムもかなりの部分がパッケージ製品に置き換わって
いくでしょう。



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  [製造業の呪縛] プログラマの労働時間のほとんどはインハウス開発
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しかし、工業製品に駆逐された職人と同じように、ソフトウェア
受託開発会社やプログラマがパッケージ製品に駆逐されるかと言うと、
それはあり得ないことです。


CPU使用時間、ユーザの利用時間という観点では、パッケージ製品の
比重は圧倒的です。
新聞、雑誌、テレビなどで広告宣伝されている割合は、もっと圧倒的です。
(請負開発のテレビCMなど見たことありません。)
世界的なソフトウェアの売上高という観点でも、パッケージ製品が
占める割合は大きいでしょう。

しかし、手間、労働時間、雇用、人件費という点では、依然として
インハウス開発が圧倒的な比重を占めているのです。
(第103号「『インハウス開発』とは」
http://www.kei-it.com/sailing/103-051128.html 参照)

尚、インハウス開発には、パッケージ製品のカスタマイズも、パッケージ
製品の上に乗るアプリケーション開発も含まれています。


パッケージ先進国の米国ですら、プログラマの労働時間のほとんどは
インハウス開発です。

> This is called `maintenance', and any software engineer or
> systems analyst will tell you that it makes up the vast majority
> (more than 75%) of what programmers get paid to do. Accordingly,
> most programmer-hours are spent (and most programmer salaries
> are paid for) writing or maintaining in-house code that has no
> sale value at all.
>
> これは「メンテナンス」と呼ばれていて、どんなソフトエンジニア
> でもシステムアナリストでも、これがプログラマの賃金の大部分
> (75% 以上)を占める点には同意するはずだ。そしてこれにともなって、
> ほとんどのプログラマの労働時間が割かれるのは(そしてプログラマの
> 給料の大部分を占めるのは)、まったく販売価値のないインハウスの
> コーディングやメンテナンスだ。
>
>       (レイモンド著、山形浩生訳「魔法のおなべ」より)



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  [製造業の呪縛] どこに焦点を絞るか
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したがって、in-house code を書くことを(持ち帰りまたは常駐で)
請負っているプログラマやソフトウェア会社は、自分たちがパッケージ
製品に駆逐されることを心配する必要はありません。

しかし、どこに焦点を絞るかということは重要です。

例えば、私は、1986年から1993年まで某ソフトハウスで、F社独自の
UNIXに組み込まれる通信制御ドライバや通信系ユーティリティの
請負開発に携わりました。
ところが、このようなメーカ独自OS内に組み込まれるソフトウェアの
請負開発は、当時と比べて今は激減しています。

OSのドライバやユーティリティ開発は、オープンソースコミュニティが
得意とする分野だからです。


オープンソースコミュニティが得意とする分野、パッケージ会社が
得意とする分野、オフショア会社が得意とする分野では彼らと競合せず、
彼らにできない分野を狙う、または彼らと協業する、利用するという
戦略を採らないと請負会社は成功しません。



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  [製造業の呪縛] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・オープンソース時代のソフトウェア会社のあり方
・製造を外注した場合のソフトウェア会社のあり方
・ソフトウェア全体を外注するサービス会社のあり方
・オープンにすること、クローズにすること、特許についての考え方


次号は、12月26日発行予定です。

乞うご期待!!



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  本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
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ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
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