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○:その他


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第141号  2006/8/21
  ▼  まえがき
  ▼  [グーグルの衝撃] ネットは本質的にビジネスに向いていない(?)
  ▼  [グーグルの衝撃] ブライアン・アーサーの技術革命史観
  ▼  [グーグルの衝撃] I(情報)インフラの構築で革命的変化が起きる
  ▼  [グーグルの衝撃] そこは大多数の人々は、儲からない世界
  ▼  [グーグルの衝撃] 「あちら側」は帝国主義の世界
  ▼  [グーグルの衝撃] 容易に模倣できない独自の差異性を
  ▼  次回以降の予告
  ▼  メールマガジン「Don't think. Just feel.」の紹介


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  まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第138号から「グーグルの衝撃」シリーズを開始しています。

このシリーズではIT業界の現在と未来について考えます。

「グーグルの衝撃」シリーズを最初から読みたい方は、
「バックナンバー グーグルの衝撃」
( http://www.kei-it.com/sailing/back_google.html )を参照して
ください。

または、ブログ( http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ )の
左列にあるCategories「グーグルの衝撃」をクリックして
ください。



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  [グーグルの衝撃] ネットは本質的にビジネスに向いていない(?)
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第138号で紹介したとおり、森永卓郎氏はIT革命論を「単なる幻想」
さらには「暗黙の共謀者による詐欺」だったとさえ言っています。

 第138号「IT革命論は、ほとんど詐欺に近いものだった」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/07/1990it_4944.html
 http://www.kei-it.com/sailing/138-060731.html
 

森永卓郎氏に言わせれば、インターネットは本質的にビジネスに向い
ていないのです。

> インターネットは情報を瞬時に世界中に広げるシステムだから、
> 経済学の教科書に書いてある完全競争の世界に近いことがそのなか
> では起こることになる。
> そして完全競争の世界とは利益がゼロになる世界だということは、
> すでに教科書のなかに書いてあるのである。
> 
>      (森永卓郎著「日本経済「暗黙」の共謀者」より)



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  [グーグルの衝撃] ブライアン・アーサーの技術革命史観
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一方、梅田望夫氏は「ウェブ進化論」で徹底したIT革命論を展開して
います。

そしてその背後にはブライアン・アーサーの技術革命史観があります。

「ウェブ進化論」によれば、ブライアン・アーサーの技術革命史観は
次のようなものです。

 ○人類は過去に次の4つの革命を経験している。
  ・産業革命(1780年〜1830年) 発祥地:英国
  ・鉄道革命(1830年〜1880年) 発祥地:英国
  ・重工業分野での革命(19世紀後半)  発祥地:ドイツ
  ・製造業革命(1913年〜1970年) 発祥地:米国

 ○1960年代から米国を発祥地として情報革命が始まり、現在も
  続いている。

そして、ブライアン・アーサーは、次のように予言しています。
 ・21世紀の最初の20〜30年間に経済に深い変質が起こる。
  (これが「大規模な構築ステージ」)
 ・我々が想像したこともなかったような完全に新しい産業が
  勃興する。
 ・長期的にみれば、これは産業革命よりももっと深く、もっと
  重要な転換である。


「ウェブ進化論」に「目先のことではなく、20〜30年間続く革命の
話をしているんだ」という壮大さを与えているものは、このブライ
アン・アーサーの理論です。


私はブライアン・アーサーの著作は読んでいないので、深くは
論じられません。
ここでは、ブライアン・アーサーの理論には、批判的な意見もある
ことのみ指摘しておきましょう。

> 1990年代の後半、ナスダックの株価が青天井に上昇していた頃、
> 「ニューエコノミー」という言葉が流行った。複雑系の経済学の
> パイオニア、ブライアン・アーサーによれば、オールドエコノミーが
> 収穫逓減の法則に基づいていたのに対して、ニューエコノミーは、
> 収穫逓増の法則に基づいているので、無制約的な成長が可能という
> ことになる。このバブルを煽った理論は、どこが間違っていたのか。
> 
>  ( http://www.nagaitosiya.com/a/new_economy.html )



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  [グーグルの衝撃] I(情報)インフラの構築で革命的変化が起きる
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梅田望夫氏は、ブライアン・アーサーの言う「大規模な構築ステージ」
とは「 I(情報)インフラの構築によって、情報そのものに関する革命的
変化が起きることだ」と説きます。


> アーサーが言う10年・20年単位での「大規模な構築ステージ」を、
> 90年代には誰もが「情報スーパーハイウェイ」つまり「物理的な
> ITインフラ」の構築なのだと考えていた。
> しかし実際に21世紀に入ってみて明らかになったのは、「大規模な
> 構築ステージ」で作られるのは、実はITインフラではなく、 I(情報)
> インフラで、それによって「情報そのものに関する革命的変化」が
> 起ころうとしているということである。 
> Iインフラの本質は、インターネットの「あちら側」に作られる情
> 報発電所ともいうべき設備だったのだ。
> 
>           (梅田望夫氏「ウェブ進化論」より)



インターネットの「あちら側」で、I(情報)インフラが作られて、
それが社会に大きな影響を与えていくという見方には、私も賛同
します。

また、Iインフラ側からウェブサービスのAPIが提供されることに
よって、「ネット・サービスのかなりのところまでを、一人または
数人のチームでどんどん作っていくことができるようになった」
( 梅田望夫氏のブログhttp://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050309/p1 
より)ということも事実でしょう。


しかし、本メルマガでは、ウェブ進化論に書かれていないことを
指摘します。



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  [グーグルの衝撃] そこは大多数の人々は、儲からない世界
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Iインフラ側からウェブサービスAPIが提供されて、システム構築が
容易になる世界、一人または数人のチームでどんどん作っていくこと
ができるようになる世界とは、どのような世界でしょうか?


たとえば、第140号で取り上げたアマゾン・ウェブサービスやecosecの
世界とは、商品情報も物流・決済システムも標準化された世界です。

 第140号「アマゾン・ウェブサービスとecosec」:
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/08/ecosec_dcc3.html
 http://www.kei-it.com/sailing/140-060814.html 

アマゾン・ウェブサービスやecosecの加盟店の全員が同じ土俵に上がって、
アマゾンやドンキホーテの商品を売るための独自サービス開発競争を
させられる世界なのです。

確かに、そこでは規模は必要ありません。
これは金のない起業家にとっては朗報でしょう。

しかし、そこは大多数の人々は、儲からない世界です。

私は「2010年のシステム開発 第3章(試読版)」
( http://www.kei-it.com/sailing/pdf/2010-shidoku-2.pdf )で、
「『素材では差別化を否定しながら、結果は差別化しなければならない』
という根本的な難しさがオープンシステムには存在する」と述べました。

そのオープンシステムの厳しさが極限にまで追求されるのが、
ウェブサービスの世界なのです。

冒頭に紹介した森永卓郎説「インターネットは完全競争だから
本質的にビジネスに向いていない」の世界です。
現在アフェリエイトで普通の人々が儲けられる金額は、どんなに
頑張ってもせいぜい月に数万円程度だということを考えれば、普通の
人がアマズレットをやっても儲けはたかが知れていることは明らかです。



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  [グーグルの衝撃] 「あちら側」は帝国主義の世界
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一方、Iインフラ提供側(梅田望夫氏の言う「あちら側」)から見ると
どうでしょうか?

ウェブサービスの世界は、その土俵に上がる人々が成功しようが失敗
しようが、確実にマージンを徴収できる世界です。
アマゾン・ウェブサービスでは売り上げの15%が徴収されます。
その利益率はアマゾン本体よりも高いそうです。

しかし、彼らもけっして楽ではありません。
「あちら側」は徹底して規模の経済が支配する世界だからです。

規模を求めて、熾烈な覇権競争が繰り広げられる帝国主義的な世界
なのです。



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  [グーグルの衝撃] 容易に模倣できない独自の差異性を
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再び、ウェブサービスの利用者の立場に戻ってみましょう。

標準化された世界でも優れたアイデアを持つ参加者なら、儲けられる
可能性はあります。
しかし、長期的に利益を生むことは容易ではありません。
アイデアはすぐにマネされてしまうからです。

 関連記事:第85号「成功確率が低く、成功しても寿命が短い」
 http://www.kei-it.com/sailing/85-050725.html 
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2005/07/post_b7f3.html


その世界で利益を上げていくためには、他の会社が容易に模倣できない
独自の差異性を創造し維持し拡大していくしかありません。

それ故に、私は慶の経営理念は下記のとおりであるべきだと述べて
いるのです。

「市場を驚かす差異性をもった製品及びサービスを効率的かつ
迅速的に提供し続けること。
そのために、個々の事業部は自らのコア・コンピタンス
(中核的競争能力)を特定化し、そこに人的資産を集中的に
投入すること。」

 関連記事:経営理念
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/07/post_54a6.html
 http://www.kei-it.com/sailing/137-060724.html



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  次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:
・グーグルの「検索」やアマゾン「推薦」は中立ではない。
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

財務系
・資産と費用

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・裁量労働制

営業系:
・売れる営業マン


次号は、8月28日発行予定です。

乞うご期待!!


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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は2006年8月18日現在、529名です。


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