メルマガ ソフトウェア業界 新航海術 |
ホーム |
バックナンバー |
2010年のシステム開発 |
航海術 |
||
バックナンバーの全文検索 全バックナンバー(古い号が先) 全バックナンバー(新しい号が先) ●:5年後のシステム開発 ●:ブルックスの法則 ●:グーグルの衝撃 ●:保存できないエディタ |
●:製造業の呪縛 ●:請負と派遣 ●:永久運動の設計 ●:大きくなるか、小さくなるか ●:ゴーイング・コンサーン ●:金持ちソフト会社、貧乏ソフト会社 |
●:経営の基準となる数字 ●:借入れと連帯保証 ●:ソフトウェア振替という麻薬 ●:賃金決定の仕組み ●:SE・プログラマの資質 ○:その他 |
************************************************************** _/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/ ************************************************************** 第16号 2004/03/22 ▼ まえがき ▼ 借入れの効果 ▼ 普通のソフトウェア受託開発会社の財務 ▼ 借入れの罠 ▼ ソフト会社の売上高営業利益率 ▼ 次回以降の予告 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= まえがき *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 蒲生嘉達です。お疲れ様です。 本メルマガは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と契約している 個人事業主の方々に配信しています。 また、会計の説明で誤りがあるといけないので、金山税理士にも 配信しています。 感想をお持ちなら是非返信してください。 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= [金持ちソフト会社、貧乏ソフト会社] 借入れの効果 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 今週号では代表的な負債である「借入れ」について解説します。 添付の「図16-1:借入れ」を参照してください。 @借入れ前 借入れ前の状態を[資産]現金500万円、[負債]借入れ0円、 [資本]剰余金0円 としています。 A借入れ 500万円借入れ、[負債]借入れが500万円に増え、[資産]現金も 500万円に増え1000万円となります。 B通常の取引 第15号の図15-1で示したような通常の取引が発生したとします。 図15-1では営業利益を0としましたが、今回は50万円としています。 これによって、[資産]現金が50万円増え1050万円となり、 [資本]剰余金も50万円増え50万円となります。 C返済 元本分100万円、利息分5万円を返済したとします。 [資産]現金は105万円減り945万円となり、[資本]剰余金は5万円減り 45万円となり、[負債]借入れは100万円減り400万円となります。 D税金 利益が出るとその約40%が法人税などの税金で取られます。 [資産]現金が18万円減り927万円、[資本]剰余金も18万円減り 27万円となります。 500万円の借入れをし、50万円の営業利益を出し、元本100万円を 返済したら、現金は450万円増えるように思えますが、実際には 利息と税金を引かれるので427万円しか増えません。(本当は 他に保証金、印紙代、手数料などを引かれるので、400万円位 しか増えません。) しかし、この例では現金不足は発生せず、剰余金も少しずつ増えて いきます。 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= [金持ちソフト会社、貧乏ソフト会社] 普通のソフトウェア受託開発会社の財務 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 従業員5人以内の零細ソフトウェア受託開発会社の損益計算書と 貸借対照表は先週号で解説した「図15-1:シンプルな取引」の集合に すぎません。 負債も少ない代わりに資産も少ない、収入が増えれば同じ割合で 支出も増えるというという具合に、収入と支出が中心になって 動いていきます。 それより規模の大きい中小ソフトウェア受託開発会社の場合は どうでしょうか? ほとんどの中小ソフトウェア受託開発会社の損益計算書と貸借対照表 は「図16-1:借入れ」で図示される次のようなパターンで動いて いきます。 ・不足する運転資金を銀行から借り入れる。 ・毎月返済しながら若干の営業利益を出す。 ・その営業利益から約40%の法人税を払い、残りを剰余金として 徐々に資本を増やしていく。 収入と支出そして負債を中心に動いていきます。 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= [金持ちソフト会社、貧乏ソフト会社] 借入れの罠 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= このパターンを理解できると、次には様々なバリエーションを 考えることができるようになります。 例えば、下記のように・・・。 通常は現金が足りないので借入れをします。したがって、借入れに よって現金が手に入ると、すぐに使ってしまいます。 その結果、返済するための現金が不足し、返済のために新たな 借入れが必要になります。 借入れが増えるに連れて銀行の融資利率も高くなり、ある時点で 営業利益よりも利息の方が大きくなってしまいます。 そうなると、「現金不足→借入れ→融資利率の上昇→現金不足→ 借入れ」という循環が加速され、ついには銀行から借りられなくなり、 ノンバンクから高い利率で借りるようになります。 これは倒産へのレールに乗ったことを意味します。 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= [金持ちソフト会社、貧乏ソフト会社] ソフト会社の売上高営業利益率 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 「図16-1:借入れ」の数字は決して非現実的な数字ではありません。 ソフト会社の売上高営業利益率について下記の二つの統計があります。 (1)平成14年度TKC経営指標 受託開発ソフトウェア業(対象企業数827件、平均従業員数17.3名)で、 1企業当たりの平均は下記のようになっています。 ・売上高:216,872千円 ・営業利益:12,127千円 ・売上高営業利益率5.59% (2)(社)情報サービス産業協会 平成14年版情報サービス産業基本統計調査 回答企業376社の平均は下記のようになっています。 ・売上高:157億9,302万円 ・従業員数:664人 ・売上高営業利益率:5.74% 統計資料に出てくる数字はだいたいこのようなものです。 しかし、実態はもっと低い(2%以下)というのが私の実感です。 業績が悪い会社は回答しない、または、数字に粉飾があるなどが その理由です。 したがって、上記の「借入れの罠」に陥る企業は少なくありません。 ちなみに、500万円を利率3.375%で借りると2年間で支払う利息は 162,045円、500万円を利率4.25%で3年借りると3年間で支払う利息 310,172円です。 この数字を見ると利息は大したことないように思いますが、 利息は残高に対するものなので、元金均等返済だと月々の支払い 利息額は最初は多く、最後は少なくなります。 したがって、上記の例で100万円返済で5万円の利息を取られることは 利率3%〜4%だとしても返済の初期においては十分にあり得ることです。 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 次回以降の予告 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 今回は普通のソフトウェア受託開発会社の損益計算書と貸借対照表 について解説しました。普通のソフトウェア受託開発会社は到底 金持ちソフト会社とは呼べません。 次回は、金持ちソフト会社のお金の流れのパターンを解説します。 次号は、3月29日発行予定です。乞うご期待!! -------------------------------------------------- 発行: 株式会社 慶 代表取締役 蒲生 嘉達 y_gamou@kei-ha.co.jp http://www.kei-ha.co.jp TEL:03-5951-8490 携帯:090-1258-6347 |