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_/_/_/_/_/_/_/  ソフトウェア業界 新航海術  _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第52号  2004/12/06
  ▼  まえがき
  ▼  [永久運動の設計] 今回は人材派遣を取り上げます
  ▼  [永久運動の設計] モノを売る商売、サービスを売る商売
  ▼  [永久運動の設計] 人材派遣業は指揮命令権のレンタル業
  ▼  [永久運動の設計] 人材派遣会社は大きい方が強い
  ▼  [永久運動の設計] ソフトウェア業界で影が薄い理由
  ▼  次回以降の予告


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  まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは2003年12月8日に創刊され、第32号(2004年7月12日号)
までは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と契約している個人
事業主の方々のみに配信していましたが、第33号からは一般の方々
にも公開しております。
発行者Webサイト: http://www.kei-it.com/sailing/ で、
バックナンバーを見ることができますし、バックナンバーの全文検索も
できます。

ソフトウェア業界の情報発信基地へと発展させていき、業界に新しい
流れを作っていきたいと願っております。

本メルマガの内容に興味を持つであろう方をご存知なら、是非
本メルマガの存在を教えてあげてください。

(以下をそのまま転送するだけです。)
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【お勧めメルマガ ソフトウェア業界 新航海術】
⇒ http://www.kei-it.com/sailing/ または
  http://www.mag2.com/m/0000136030.htm
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  [永久運動の設計] 今回は人材派遣を取り上げます
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第51号で次のように予告しました。

> システム開発請負会社の最適規模は10年前と比べ、明らかに小さく
> なっています。
> しかし、何名が最適規模かという答えを出すためには、一括請負
> ビジネスと準委任請負ビジネスとを分けて考える必要があるでしょう。
> 
> これは次号で論じます。

一括請負と準委任の違いは、「ソフトウェア業界 航海術」試読版
( http://kcode.jp/kcode/dl/k-base.pdf )「1.1 請負契約と委任契約」
を参照してください。

一括請負と準委任の適正規模を論じる前に、今回は少し回り道して
人材派遣について考えてみます。

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派遣
 任務を負わせて、他の地に行かせること(goo国語辞典)
 文例:特使を―する 
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我々は日常「派遣」という言葉を上記のように使います。
イラクに駐留している自衛隊も「派遣」されているのです。
したがって、準委任契約による常駐作業も「派遣」と言う場合があります。

しかし、今回解説する「人材派遣」はスタッフサービスやマンパワー
などが行っている「労働者派遣法に基づく一般派遣」です。

尚、株式会社 慶は特定派遣の免許は持っていますが、業務としては
行っていません。



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  [永久運動の設計] モノを売る商売、サービスを売る商売
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自動車会社は自動車が、八百屋は野菜が、分譲マンション業者は
マンションが商品です。これらはモノの所有権を売買する商売です。

一方、モノの所有権ではなくサービス(役務)を提供する商売も
あります。
床屋は髪の毛を切ること、学習塾は学習指導、社会保険労務士は
労務関係のコンサルティングや手続き代行によって対価を得ます。
ソフトウェア会社が準委任契約でプログラムを作成したり、
ネットワーク構築したり、サーバ運用する場合も同じです。
これらにおいては、顧客からの報酬は提供したサービス(役務)
に対して支払われます。

本題からそれますが、ソフトウェアの一括請負の場合はもう少し複雑です。
納品物があるという点では、モノを商品としているかのように見えます。
納品と対価の支払いによって、プログラムの所有権が移転します。
しかし、ソフトウェアの一括請負には他のモノの販売とは違う特色が
あります。
例えば、ハウスメーカに注文住宅の見積を依頼した場合、見積書の
大部分は「部品×数量」です。
その住宅のために職人が何人働くかなどということはどこにも書かれ
ていませんし、顧客もそのようなことを全く気にしません。

一方、ソフトウェア一括請負の見積の基本は昔も今も「この作業に
技術者が何日かかるか」です。
つまり外見は工事請負契約ですが、一皮向けば役務の提供の契約である
面が見えてきます。

一括請負という契約については別の機会に論じましょう。


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  [永久運動の設計] 人材派遣業は指揮命令権のレンタル業
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人材派遣会社は何を売っているのでしょうか?
顧客と人材派遣会社との派遣契約によって何が移転するのでしょうか?
それは社員に対する指揮命令権です。
雇用契約は人材派遣会社と社員との間で結ばれます。
雇用契約が結ばれた瞬間に人材派遣会社と社員との間で様々な権利・
義務が生じます。
例えば、社員には会社の指揮命令の下で労働を提供する義務が生じ、
会社には賃金を支払う義務が生じます。
また、会社には雇用保険や社会保険に加入する義務が生じます。

顧客と人材派遣会社との間で交わされる派遣契約とは、これらの権利・
義務の中で、会社の社員に対する指揮命令権(社員の側からすれば
労働を提供する義務)のみを切り離して、レンタルする契約なのです。

派遣契約は指揮命令権をレンタルする契約なので、派遣会社は社員が
派遣先で提供した労働に対する結果責任は負いません。
その労働は顧客の指揮命令によってなされたものだからです。
ソフトウェアの請負開発の場合、一括でも準委任でもソフトウェア会社に
瑕疵担保責任がありますが、人材派遣会社には瑕疵担保責任はありません。
派遣社員が顧客が満足できるパフォーマンスを発揮できなければ
顧客から「交換」を要求されることはありますが・・・。


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  [永久運動の設計] 人材派遣会社は大きい方が強い
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人材紹介と人材派遣はともに人材を扱うビジネスでありながら、
規模や範囲の経済については対極に位置します。

規模や範囲の経済は人材紹介ではほとんどはたらきませんが、人材派遣
では強力にはたらきます。

人材というものの捉え方が対照的だからです。

人材紹介は人材の全人格的な個性を扱います。
一方、「顧客は派遣労働者を特定してはならない」というのが人材派遣の
建前です。
人材派遣では、人材を「経理事務経験者」「翻訳者」「OAインストラクター」
というようにその社員がもつ特定技能を抽象化したものとして捉えます。
つまり人材を、規格化し、分類し、交換することが可能なものとして扱います。
労働者派遣法は顧客が規格化された技能以外の要素(年齢、性格など)で
特定することを禁止しています。
したがって、顧客による事前面接も禁止されています。
(実際には、ほとんど全ての人材派遣会社が事前面接という違法行為を
行っていますが・・・。)

人材派遣会社の構成要素は次の通りです。
(1)大量なオーダー(人材派遣の世界では案件情報を「オーダー」と呼びます)
 を集める営業マン。
(2)派遣社員を集めるための大掛かりな人材募集。
(3)オーダーと派遣社員とをマッチングするコーディネーター。
(4)信用力をあげる立派なオフィス

(1)(2)(3)はオーダーと人材を規格化して流通させる行為です。
したがって、人材派遣会社には規模や範囲の経済が強くはたらきます。

> モノ・カネ・情報の流通に関しては、「規模の経済」「範囲の経済」が
> かつてないほど強力になってきています。
> (第50号 http://www.kei-it.com/sailing/50-041122.html より)



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  [永久運動の設計] ソフトウェア業界で影が薄い理由
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しかしながら、人材派遣会社はソフトウェア業界では影の薄い存在です。
「Java技術者が50名足りない」と言っている現場でも「それでは
人材派遣会社に頼もう」という声は出てきません。

人材派遣会社には優秀なソフトウェア技術者はいないからです。
その理由の一つとして、ソフトウェア業界では需要が供給を大幅に
上回っているということがあげられます。
ソフトウェア技術者は労働者派遣法で守られなければならないほど
弱い存在ではないのです。

しかし、もう一つ重要な理由があります。
人材を規格化・分類・交換可能なものとして扱うという人材派遣会社の
本質がソフトウェア開発の本質と合わないのです。

> ソフトウェア職人はユーザや顧客が手にしたアプリケーションや
> システムの満足度によって評価されるのです。こういった考え方は、
> 資格によって分類された交換可能なエンジニアというコンセプトとは
> 対極に位置しているのです。
> (ピート・マクブリーン著「ソフトウェア職人気質」より) 



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  次回以降の予告
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次号以降で下記のテーマを取り上げます。
・システム開発受託会社の適正規模。(一括と準委任)
・差異性を創造し維持し拡大する方法。

次号は、12月13日発行予定です。乞うご期待!!


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