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第60号  2005/01/31
  ▼  まえがき
  ▼  [保存できないエディタ] 明示的な保証
  ▼  [保存できないエディタ] 商品性に対する黙示の保証
  ▼  [保存できないエディタ] 特定目的適合性に対する黙示の保証
  ▼  [保存できないエディタ] 保証放棄
  ▼  [保存できないエディタ] 次回以降の予告


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  まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。
最近のできごとです。

(1)ソフト人脈
業界紙「ソフト人脈」1月25日号に、慶の「倍速開発」の記事と、慶が
加盟しているコンソーシアム「羅針盤21」の記事が掲載されました。
見出しは次のとおりです。
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慶
注目の開発手法 
Webシステム開発のコスト・工期を従来の約1/2に
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羅針盤21
一致団結
システム開発会社12社集結 在庫管理システムを共同受注
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(2)無償対応/有償対応アンケート
第57号で私が提起した問題について、メルマガ「新・中国ビジネス入門」
の発行者である幸地司氏がサイトでアンケートを実施しました。
非常に参考になりますので、下記URLを参照してください。

アンケート結果:
http://clickenquete.com/a/r.php?Q0003268C5aac

新・中国ビジネス入門:
http://www.ai-coach.com/cipmag.html



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  [保存できないエディタ] 明示的な保証
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第59号では次の2点を述べました。
・品質を決める要素は魅力と不具合である。
・品質に関する約束のことを保証という。

今週号では、市販ソフトウェアの保証について解説します。

家電製品を買った人が、製造元に不良品の無料修理、交換、返品を
要求するとき、何を根拠に「これは不良品である」と言うのでしょうか?

販売用パンフレット、仕様書、ユーザマニュアル、パッケージの
記載内容、テレビでのCMなどです。
これらの文章、映像、音声によって明示された約束は、「明示的な
保証」です。

これは、車でも、玩具でも、パソコンでも、市販ソフトウェアでも
同じです。



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  [保存できないエディタ] 黙示の保証
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しかし、保証は明示的なものだけではありません。
「黙示の保証」もあるのです。

「黙示の保証」という概念は米国においてはごく一般的なものであり、
米国企業の製品はハードウェアでもソフトウェアでも、その保証条件の
中でほぼ例外なく「黙示の保証」について言及しています。

ここでは二つだけ例を挙げます。

・iPod保証条件
http://store.apple.com/Catalog/Japan/Images/apple_ipod_warranty.html
「アップルは、特に一切の黙示保証をしないもとのし、これには商品性、
特定目的適合性に対する黙示の保証等を含むものですがこれに限るもの
ではありません。もし、黙示の保証に対する制限を法的に認めない地域
がある場合、黙示の保証は、本保証の期間に制限されます。」

・SUN MICROSYSTEMS, INC.バイナリコードライセンス契約書
http://www.java.com/ja/download/license.jsp
「本契約に明記されていない限り、商品性、特定目的への適合性、または
権利の非侵害性に関する黙示の保証を含む、すべての明示的または黙示
的な条件、表明および保証を否認します。ただし、これらの否認が法令
で認められていない場合はこの限りではありません。」


読者も試しにGoogle等の検索エンジンで「黙示の保証」で検索して
みてください。膨大な件数の文書がヒットします。
そして、それらの中身を見てみると、米国製品の保証条件、及びその
マネをした日本製品の保証条件のほとんどが「商品性、特定目的適合性
に対する黙示の保証」という同じ文言を使用していることに気付く
でしょう。



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  [保存できないエディタ] 商品性に対する黙示の保証
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この「商品性、特定目的適合性に対する黙示の保証」とはいったい
何でしょうか?

まず「商品性に対する黙示の保証」について説明します。

これは、米国統一商事法典(U.C.C.)中の「売り手が小売商であった場合
その売買契約は商品が商品性を持つことを黙示的に保証する」という
規定に基づく保証です。
「商品が商品性を持つことを黙示的に保証する」と言われても、よく
分かりませんね。

ここの部分が「基本から学ぶソフトウェアテスト」(Cem Kaner,Jack Falk,
Hung Quoc Nguyen著)では次のように分かりやすく書かれています。

> 言い換えると、プログラムは一般のユーザの期待どおりに動かな
> ければならないということだ。ワープロは、テキストファイルが扱え、
> 分かりやすく画面に表示し、印刷もできなければならない。そして
> すべての機能は、普通の分別を持ち合わせているユーザがうんざり
> しない程度に使い勝手が良くなければならない。・・・(中略)・・・
> この「黙示の保証」はプログラムにバグが皆無であることまでは要求
> していない。ただし、プログラムは同等の機能を持つ製品との比較に
> おいて、信頼性に重大な欠陥があってはならない。またバグが通常の
> 使用方法を妨げてはならない。


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  [保存できないエディタ] 特定目的適合性に対する黙示の保証
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次に「特定目的適合性に対する黙示の保証」について説明します。

これも米国統一商事法典中の「売り手が契約締結時、商品に要求される
特定の利用目的を知り得、適性な商品の選択および取付けについて、
買い手が売り手の専門知識と判断を信任したと認められる場合、
・・・(中略)・・・その特定目的に適合するという黙示の保証責任が
発生する」という規定に基づく保証です。

例えば、パソコンショップで客が「私はWindows98を使用しています。
Windows98で動く画像編集ソフトをください」と頼んだのに、店員が
Windows2000以上でないと動かないソフトを売ってしまった場合が
これにあたります。



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  [保存できないエディタ] 保証放棄
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ここでもう一度、上記「iPod保証条件」や「SUN MICROSYSTEMS, INC.
バイナリコードライセンス契約書」を読んでください。
これらは、黙示の保証の存在自体は認めながらも、「黙示の保証はしない」
と言っているのです。このようなことは許されるのでしょうか?

「基本から学ぶソフトウェアテスト」によれば、米国各州によって
違いはありますが(iPod保証条件でも「黙示の保証に対する制限を
法的に認めない地域」という言葉があります)、ほとんどの州では、
保証の除外は良心的であれば可能であるとしているそうです。

ただし、明示的保証は放棄することができません。
パンフレットで保証したことを免責条項で取り消すことはできません。



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  [保存できないエディタ] 次回以降の予告
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第57号での有償追加派と無償追加派の対立は重要な問題を提起して
いるので、結論を出すのはあと数回かかります。
次回以降では次のようなことを順次解説していきます。
・市販ソフトウェアの保証と請負開発の保証の違い。
・ウォータフォール型開発プロセスと請負開発との密接な関係。
・漸増的開発プロセスと市販ソフトウェア開発との密接な関係。
・契約には違反していないが、製品として欠陥がある場合(第57号
 での例のような場合)の考え方。
・請負開発をインクリメンタルにやるためにはどうすればよいのか。


次号は、2月7日発行予定です。

乞うご期待!!



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  本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
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彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。


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