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************************************************************** _/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/ ************************************************************** 第61号 2005/02/07 ▼ まえがき ▼ [保存できないエディタ] 米国では小規模開発は請負契約で行わない ▼ [保存できないエディタ] 米国ではウォータフォールは増えている(?) ▼ [保存できないエディタ] 次回以降の予告 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= まえがき *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。 下記はメルマガ「中国ビジネス入門 〜信頼と契約」からの引用です。 > ●日本の企業間取引は、ある意味、信頼関係でなりたっているといっ > た文化的な側面があります。最近は、そうでもないかもしれませんが。 > でも、中国や韓国は、やはり契約主義的な性格が強く、信頼関係が > あっても契約上で明記しておかないと問題になるケースがあります。 > ( http://www.ai-coach.com/backno/cip0179.html 参照) オフショア開発でも国内の請負開発でも、請負開発についての原則を 理解した上で、現実の様々な事情に合わせた対応をする必要があります。 今週号から請負開発の保証について考えていきます。 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= [保存できないエディタ] 米国では小規模開発は請負契約で行わない *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 下記は「基本から学ぶソフトウェアテスト」(Cem Kaner,Jack Falk, Hung Quoc Nguyen著)からの引用です。 > 数年前は、ほとんどのソフトウェアは請負契約によって開発され > ていた。大規模プロジェクト、また多くの中規模プロジェクトは > 今日でも請負契約によって開発されている。 この文章の前半は「数年前は、ほとんどのソフトウェアは請負契約に よって開発されていたが、現在では市販ソフトウェアや小規模プロ ジェクトは請負契約では開発されていない」と解釈できます。 近年、米国で市販ソフトウェア開発や小規模開発が請負契約で行われ なくなったことが事実なら、その理由として次の二つが考えられます。 (1)漸増的開発プロセスの普及 市販ソフトウェア作成や小規模プロジェクトは漸増的開発プロセス (進化的開発プロセス、反復的開発プロセスとも言います)で開発 されるようになりました。 漸増的開発プロセスでは、作りながら仕様を固めていくので、請負 契約にはなじまないのです。 > 市販ソフトウェアは、短期間に、比較的組織的でない方法で > 開発されている。開発とテストは全ての仕様が完全になる前に > 開始され、完全な仕様は存在しないかもしれず、プログラムの > 全ての仕様を市場の要求があればすぐに変更する。 > (「基本から学ぶソフトウェアテスト」より) このような開発は請負契約ではやりにくいのです。 これは日本でも同じで、「完全な仕様は存在しないかもしれない」 というような開発は、社員、契約社員で行うか、外部委託するに しても準委任契約で行う方が自然なのです。 (2)市販ソフトウェアの勢力 もう一つの理由として、米国では小規模プロジェクトの多くは市販 ソフトウェアまたは市販ソフトウェアのカスタマイズに置き換わった ということが考えられます。 米国では日本よりもはるかに市販ソフトウェアの力が強いのです。 日本では各企業が個別に基幹システムや販売管理システムなどを 特注するのに対し、米国ではそれらのシステムもERP、SMCなどの パッケージソフトで構築します。 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= [保存できないエディタ] 米国ではウォータフォールは増えている(?) *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 先の引用文の後半は、「大規模プロジェクト、また多くの中規模 プロジェクトは今日でも請負契約によって開発されている」です。 そして、これらのプロジェクトは今日でもウォータフォール型で開発 されています。 日本の学者や技術系マスコミは、ウォータフォールは時代遅れの開発 プロセスであり、米国では廃れているようなことを言います。 しかし、米国でも中規模以上のプロジェクトはウォータフォール型で 開発されています。それも日本以上に徹底したウォータフォール型で。 > 「本当のウォータフォール開発プロセス」では、テスト計画作成の > 開始は、正式な変更管理とプロジェクト全体に対する通知プロセスに > 従った、承認された、完全で、正確で、詳細な仕様書を受け取った時 > である。この状況は、市販ソフトウェアでは稀であるが、より大きい > プロジェクトではそうでもない。 > (「基本から学ぶソフトウェアテスト」より) 「詳細な仕様書」にかかる修飾語がたくさんある読みにくい文章ですね。 しかし、この文章から「本当のウォータフォール開発プロセス」は 今日の米国の請負開発でも珍しいものではないことが分かります。 もう一つインターネットで見つけた記事を紹介しましょう。 http://www.ogis-ri.co.jp/otc/hiroba/specials/ScottAmbler/interview20Nov2003.html#offshore XPの提唱者であるスコット・アンブラー氏に対して、藤井拓氏が 2003年9月にインタビューした記事です。 「北米でウォータフォール型開発プロセスは減り、絶滅しそうな 状況なのでしょうか?」という質問に、スコット・アンブラー氏は 次のように答えています。 「絶滅しないでしょう。それどころか、オフショア開発にはウォータ フォール型開発プロセスが適しているので、増えてさえいます。」 上記回答でスコット・アンブラー氏が本当に言いたいことは、 「ウォータフォール型開発はオフショア開発に移行するから、 米国の技術者はXPに移行しなさい」ということです。 そのことの当否はさておいて、この発言から、ウォータフォール型 開発プロセスが、今なお、米国においても健在であり、増えている 分野すらあるということが分かります。 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= [保存できないエディタ] 次回以降の予告 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 第57号での有償追加派と無償追加派の対立は重要な問題を提起して いるので、結論を出すのはあと数回かかります。 次回以降では次のようなことを順次解説していきます。 ・ウォータフォール型開発プロセスと請負開発との密接な関係。 これだけ批判されるウォータフォールが何故廃れないのでしょうか? 開発プロセスを技術的側面からではなく、契約的側面から見ると、 ウォータフォールの別の顔が見えてきます。 ・漸増的開発プロセスと市販ソフトウェア開発との密接な関係。 漸増的開発プロセスの基本に戻り、請負開発を漸増的に行う ためにはどうすればよいのか考えます。 ・市販ソフトウェアの保証と請負開発の保証の違い。 ・契約には違反していないが、製品として欠陥がある場合(第57号 での例のような場合)の考え方。 次号は、2月14日発行予定です。 乞うご期待!! *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 本メルマガについて *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= 本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。 創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、 本メルマガのコンセプトは「読みものとしても面白い慶の事業計画」であり、 目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。 したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び 慶と契約している個人事業主を想定しています。 彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。 また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、 ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、 第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する ことにしました。 本メルマガの内容に興味を持つであろう方をご存知なら、是非 本メルマガの存在を教えてあげてください。 (以下をそのまま転送するだけです。) --------------------------------------------------- 【お勧めメルマガ ソフトウェア業界 新航海術】 ⇒ http://www.mag2.com/m/0000136030.htm または http://www.kei-it.com/sailing/ --------------------------------------------------- このメルマガに対するご感想・ご質問はこちらにお寄せください。 office@kei-ha.co.jp -------------------------------------------------- このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して 発行しています。配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000136030.htm (但し、web@kei-ha.co.jp it@kei-it.com には直接配信しています。) 発行者Webサイト: http://www.kei-it.com/sailing/ (発行者Webサイトではバックナンバーの全文検索も可能です。) -------------------------------------------------- 発行: 株式会社 慶 代表取締役 蒲生 嘉達 y_gamou@kei-ha.co.jp Webシステム開発事業部 http://www.kei-ha.co.jp ITサービス事業部 http://www.kei-it.com 人材コンサルティング事業部 http://www.k-bank.jp TEL:03-5951-8490 ☆ コピーや配布をされる時はご一報ください ☆ |