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第88号  2005/08/15
  ▼  まえがき
  ▼  [賃金決定の仕組み] 職能給って年次で決まるものなの?
  ▼  [賃金決定の仕組み] 年功制から職能資格制度へ
  ▼  [賃金決定の仕組み] 古典的な年功制、能力主義的な年功制
  ▼  [賃金決定の仕組み] 職能資格制度+年功制 vs. 成果主義
  ▼  [賃金決定の仕組み] 成果主義セミナー(無料招待できるかも)
  ▼  [賃金決定の仕組み] 次回以降の予告


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  まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第86号から成果主義型賃金制度をテーマとしています。
このテーマはあと数回続きそうなので、また、一旦終了しても、
断続的に続きそうなので、「永久運動の設計」シリーズから独立させて
「賃金決定の仕組み」シリーズとしました。

「賃金決定の仕組み」シリーズを最初から読みたい方は、
http://www.kei-it.com/sailing/back_salary.html を参照してください。



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  [賃金決定の仕組み] 職能給って年次で決まるものなの?
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今後、社内開発の技術者、営業・管理などのスタッフの賃金決定の
仕組みについて考察していきます。

しかし、その前に、基本的な概念(年功制、能力主義、成果主義、
職能給、職務給など)を理論的に整理しておきましょう。


下記はAERA 2005年6月13日号「変種成果主義に負けない 漂流する
日本企業の制度」( http://www.asahi.com/job/special/TKY200506150203.html )
に出てくる文章です。

> 比嘉さんの勤める中堅メーカーは多くの日本企業と同様、年功序列型の
> 賃金制度だった。しかし、業績不振で会社は成果主義を採用。
> 年次で給料の決まる「職能給」から、ポストで賃金の決まる「職務給」へ
> 改定した。

この文章を読んで、読者は疑問に思わないでしょうか?

そもそも「職能給」って年次で決まるものなのですか?
年次で決まる「勤続給」に代わるものとして、能力で決まる「職能給」
が導入されたのではないのですか?
年功とは関係なしに能力を評価して処遇を決定するのが職能資格制度
ではないのですか?



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  [賃金決定の仕組み] 年功制から職能資格制度へ
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日本の賃金制度の歴史を書いた本やホームページ(例えば、
http://www.progress-site.com/manage/02_06.html )では、年功制と
職能資格制度との関係は次のように解説されます。

 年功を基準にして賃金などの処遇を決めていくと、会社が飛躍的に
 成長している間は大きな問題にはならないが、会社の規模的な拡大が
 停滞すると、役職ポストも不足するし賃金もそれまでのように上昇
 させるわけにはいかなくなる。
 したがって、高度成長が終わりを告げた頃から、年功とは関係なしに
 能力を評価して処遇を決定する職能資格制度が広く浸透していくこと
 になった。



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  [賃金決定の仕組み] 古典的な年功制、能力主義的な年功制
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高度成長時代の古典的な年功制では、賃金=年齢給+勤続給+役職手当
でした。今でも公務員はこの古典的な年功制です。
「勤続給」がある分、中途入社組が生え抜き組を追い抜かすことは
ありませんでした。


一方、職能資格制度では、賃金=年齢給+職能給+役職手当 となります。

ごく標準的な職能資格制度とは次のようなものです。

・主任、課長代理、課長、次長、部長 などの役職とは別に、社員の
 職能資格を決めます。
 例えば、社員1級、社員2級、・・・というように決めます。
 この等級区分は10段階前後が一般的です。

・等級が上がるための最低経過年数が定められています。
 例えば「社員1級から2級に上がるためには最低2年間は勤続しなければ
 ならない」など。

・また、役職と等級とはリンクされています。
 例えば「主任は社員5級でなければなれない」など。


職能資格制度は、実際の細かい制度設計と運用次第で、年功的にも
能力主義的にもなり得ます。

例えば、年齢給を完全には廃止しないケースもあります。
むしろその方が一般的で、例えば、年齢給4割、職能給6割というように
ブレンドされます。

年齢給を廃止せず、最低経過年数を長めにとり、役職と等級との
リンクを強めれば、職能資格制度は実質的には年功制に近くなります。

一方、年齢給を完全に廃止し、最低経過年数を短くし、役職と等級
とのリンクを緩めれば、急速な昇給、昇進も可能になり、能力主義的に
なります。



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  [賃金決定の仕組み] 職能資格制度+年功制 vs. 成果主義
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高橋伸夫著「虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ」を7割位
読みました。

副題は「日本型年功制復活のススメ」ですが、高橋伸夫氏は、古典的な
硬直した年功制に返れと言っているわけではありません。

高橋伸夫氏が復活を主張している年功制は、職能資格制度によって
修正され、能力主義的に運用されている年功制です。
日本企業がオイルショックなどの危機に直面しながらも、逞しく乗り
越えていった時代の年功制です。

高橋伸夫氏にとっては、年功制、職能資格制度は同義語で、その反対語が
成果主義なのです。
最近は、高橋伸夫氏だけでなく、これがこれらの用語の一般的な使い方に
なっています。

論点が、「年功制vs.職能資格制度」から「職能資格制度によって
修正された年功制vs.成果主義」に変わったからです。


冒頭に紹介したAERAの記事で、「年功序列=職能給」であるかのように
書かれている理由はこのためです。



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  [賃金決定の仕組み] 成果主義セミナー
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慶が所属している業界団体「羅針盤21」http://r-21.jp/ で、
成果主義をテーマとした研修会を行います。

【日時】8月24日水曜日13:30〜17:00
【場所】市谷
【テーマ】本当の意味での成果主義型報酬体系とは何か?
【講演会内容】
 13:30〜14:00 導入(蒲生)
 14:00〜15:00 講演(人事労務コンサルタント内藤講師)
 15:00〜15:15 休憩
 15:15〜16:00 講演(人事労務コンサルタント畑中講師)
 16:00〜16:45 ディスカッション


本来は羅針盤21の会員しか出席できませんが、席が空いていれば、
無料招待できるかもしれません。
希望者がいれば、理事長にお願いしてみますので、無料招待希望者は
office@kei-ha.co.jp にメールをください。



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  [賃金決定の仕組み] 次回以降の予告
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次号は次のようなテーマで書く予定です。

・成果主義とは何か?
・ソフトウェア会社と成果主義



次号は、8月22日発行予定です。

乞うご期待!!



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  本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
本メルマガのコンセプトは「読みものとしても面白い慶の事業計画」であり、
目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
慶と契約している個人事業主を想定しています。
彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は平成17年8月13日現在、420名です。


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