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第90号  2005/08/29
  ▼  まえがき
  ▼  [賃金決定の仕組み] 給与は動機づけの中心ではない
  ▼  [賃金決定の仕組み] 人事面での基本的な指針
  ▼  [賃金決定の仕組み] 個人事業主と整合性のある人事システム
  ▼  [賃金決定の仕組み] スタッフ部門に最適の賃金制度
  ▼  [賃金決定の仕組み] 次回以降の予告


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  まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第86号から成果主義型賃金制度をテーマとしています。
このテーマはあと数回続きそうなので、また、一旦終了しても、
断続的に続きそうなので、「永久運動の設計」シリーズから独立させて
「賃金決定の仕組み」シリーズとしました。

「賃金決定の仕組み」シリーズを最初から読みたい方は、
http://www.kei-it.com/sailing/back_salary.html を参照してください。


最近、賃金制度関係で下記の3冊の本を読みました。

(1)虚妄の成果主義 高橋伸夫著 日経BP社
(2)リストラと能力主義 森本卓郎 講談社現代新書
(3)デフレに克つ給料・人事 蒔田照幸著 文春新書

3冊とも非常に参考になりました。
今週号ではこの3冊について少し詳しく書きます。


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  [賃金決定の仕組み] 給与は動機づけの中心ではない
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「虚妄の成果主義」は極めて根本的な問題を扱っていました。

我々はついつい「給与や作業条件を良くすれば、職務満足度が高まり、
生産性も向上する」つまり「給与や作業条件が動機づけの中心である」と
考えてしまいます。

高橋伸夫氏はこれを真っ向から否定します。
給与や作業条件は欠勤・離職(参加の意思決定)とは密接に結びついて
いるが、生産性(生産の意思決定)や職務満足とは関連がないと主張します。
給与や作業条件は、「もっぱら職務不満足を予防するための環境的要因」
だと言うのです。

これは我々の日常的な観察と一致します。
「給料が低いから会社を辞めた」という話はよく聞きます。
そして、給料が高ければ確かに離職率は低下するでしょう。
しかし、給料の高い会社の人たちが職務に満足していて、生産性も高く、
創造性を発揮しているかというと必ずしもそうではありません。
現実にはその逆ケースの方も多いのです。

「仕事はつまらないが、給料はそこそこもらえるし、安定しているから
辞められない。仕事は会社から文句を言われない程度にやっている」
という話もよく聞きます。



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  [賃金決定の仕組み] 人事面での基本的な指針
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では、何によって人は職務に満足し、生産性を高め、創造性を発揮する
のでしょうか?

高橋伸夫氏は、それは、自分が有能であるという感覚、自己決定度、
そして、将来への見通しであると言います。
そして、その証拠として、高橋伸夫氏は下記の質問に対する答えと
満足比率とがきれいな直線的関係を示したという調査結果を挙げています。

(1)トップの経営方針と自分の仕事との関係を考えながら仕事をしているか。 
(2)上司からの権限委譲がなされているか。 
(3)自分の意見が尊重されていると思うか。 
(4)21世紀の自分の会社のあるべき姿を認識しているか。 
(5)良いと思ったことは、周囲を説得する自信があるか。 

上記5項目は、このまま、慶の(そして他のソフトウェア会社でも)
人事面での基本的な指針になり得るものです。



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  [賃金決定の仕組み] 個人事業主と整合性のある人事システム
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一方「リストラと能力主義」は、「個人優先の人事制度」を説いている
本です。

全体の三分の一位が、近未来小説風になっています。

ある会社で人事部長と組合の委員長が話し合って、次々と人事制度を
改革していく物語ですが、最終局面で組合の委員長が「われわれを
個人事業主にしてください」と要望するストーリーになっています。

森本卓郎氏は「強い日本的雇用慣行の下で働いているサラリーマンには、
あまりに非現実的な極論に思えるかもしれないが、私は10年もしない
うちに、この物語が身近なものになると確信している」と言います。

ほとんどの人事・労務関係の本では、個人事業主は無視されます。
その中で、この本が「自由と自己責任の人事システムを追及していくと、
最後にたどりつくのは個人事業主である」と主張し、個人事業主について
きちんと考えていることは立派です。

下記のことを考慮すると、ソフトウェア会社の人事システムは、
個人事業主も含めた人事システム、個人事業主と整合性のある人事
システムであるべきです。
・プログラマは知的創造的職業である。
・ソフトウェア開発技術は企業横断的な職業能力である。
・上記と関連して、ソフトウェア業界は人材の流動性が高く、
 個人事業主が多い。


個人事業主の増加については、第83号「個人事業主とは」
( http://www.kei-it.com/sailing/83-050711.html )を参照してください。

また、個人事業主と整合性のある人事システムについては、第87号
「ICグループは吉本興業や大野事務所に学べ」「成果主義型正社員グループ」
( http://www.kei-it.com/sailing/87-050808.html )
を参照してください。



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  [賃金決定の仕組み] スタッフ部門に最適の賃金制度
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3番目の本「デフレに克つ給料・人事」で蒔田照幸氏が推奨している
賃金制度は「責任等級制度」です。

「責任等級制度」は「職能資格制度」(第88号、第89号参照)から曖昧さを
排除し、成果主義的要素を強めた制度です。
それでいて、「虚妄の成果主義」で高橋伸夫氏が主張している
長期雇用の良さを引き出しています。

プログラマのように企業横断的な職業能力ではなく、企業固有の職業能力が
求められるスタッフ部門には、これが最適の賃金制度だと思います。

詳細は次号以降でお話します。



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  [賃金決定の仕組み] 次回以降の予告
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次号は次のようなテーマで書く予定です。

・責任等級制度とは何か?
・成果主義とは何か?
・ソフトウェア会社と成果主義



次号は、9月5日発行予定です。

乞うご期待!!



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