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第129号 2006/5/29
▼ まえがき
▼ [派遣と請負の間] 準委任契約と労働者派遣契約を分かつもの
▼ [派遣と請負の間] 注文か命令か?費用の償還請求か時間管理か?
▼ [派遣と請負の間] 成果と費やした時間が比例しない
▼ [派遣と請負の間] 裁量労働型の労働者派遣
▼ [派遣と請負の間] 派遣、業務請負に関するバックナンバー
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

下記は日経ITPro「IT業界のタブー「偽装請負」に手を染めてませんか 」
( http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/OPINION/20060113/227252/ )
からの引用です。


> 偽装請負とは,書類上は請負契約もしくは業務委託契約(以下,
> 請負契約)でありながら,開発・運用担当者を実質的に「派遣」
> として働かせて利益を得る行為のことをいう。
> ちなみに客先に常駐すること自体は違法ではなく,労働者への指示や
> 時間管理をしていることが問題となる。



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[派遣と請負の間] 準委任契約と労働者派遣契約を分かつもの
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確かにコーダ、テスター、オペレーター、初級プログラマの仕事を
請負契約でやっていて、顧客が労働者への指示や時間管理をしているなら、
偽装請負にあたる可能性が高いでしょう。

しかし、上級プログラマ、SEなら、たとえ一人で客先常駐作業をして
いる場合でも、労働者派遣契約よりも、請負契約の方が自然だと私は
思います。

上級プログラマ、SEの仕事は本質的に自由裁量の余地がある仕事であり、
それ故に、労働者派遣はなじまないからです。
(第54号「準委任と人材派遣を分かつもの」
http://www.kei-it.com/sailing/54-041220.html 参照。



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[派遣と請負の間] 注文か命令か?費用の償還請求か時間管理か?
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SEが一人で客先常駐作業をするとき、確かに顧客からの注文を受け
ながら仕事をします。

例えば、進捗会議などにSEが出席して、その席上で顧客から要望が
出され、SEが受諾するということもあるでしょう。

【問1】
これは、請負における「注文」なのでしょうか?
それとも労働者派遣における「指図」「命令」なのでしょうか?


また、時間清算も行われています。

例えば、「月の稼動実績が180時間を越えた分は30分単位で時間清算
する」というように。

【問2】
これは請負(準委任)における「必要な費用の償還請求」なのでしょうか?
(弁護士や公認会計士などの典型的な準委任契約でも時間清算は
あります。)
それとも労働者派遣における「分単位の時間管理」なのでしょうか?



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[派遣と請負の間] 労働時間と成果が比例しない
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上記「問1」「問2」については別の機会に論じるとして、
今回は、仮にSEの1人常駐を労働者派遣で運用するとしたらどのような
運用になるのかという点から論じてみましょう。


事務職や製造業の職工では、労働時間と成果はだいたい比例します。
そして、労働者派遣はそのような、労働時間と成果がほぼ比例する
ような仕事を前提としています。
したがって、分単位の時給清算となります。


しかし、SE・PGの場合、労働時間と成果は比例しません。
そのため、多くのソフトウェア会社は、「生産性の低い人ほど残業が
増え給料が高くなってしまう」という問題に悩まされています。
長年雇用し、技量が分かっている正社員を使っても時間と成果が
比例しないのです。

SEの常駐作業を労働者派遣で運用する場合には、同じ問題を顧客が
抱えることになるでしょう。



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[派遣と請負の間] 裁量労働型の労働者派遣
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SE/PGの世界に本当に労働者派遣を普及させるためには、「時間と成果が
比例しない仕事の労働者派遣はどうあるべきか」という難問を解決しな
ければなりません。

この問題を解決するためには「裁量労働型の労働者派遣」という
考え方を導入する必要があるかもしれません。

「裁量労働」というのは、大枠で目標は与えられているが、仕事の
進め方などは、すべて自分の裁量で決めていく仕事のことです。

裁量労働については、その業務を通常処理するためにはどの程度の
時間を労働するとみなすのが適当であるかについて労使で協定をした
ときは、その時間労働したものとみなすという制度が、労動基準法で
定められています。これを「裁量労働制」と言います。

但し、裁量労働制を採用しても、みなし労働時間を超えた時間外労働
手当はありますし、深夜労働手当や休日出勤手当もあります。
(この点は多くの経営者が誤解しています。)


もしも本当にSE/PGの世界に労働者派遣を普及させたいなら、SE/PGの
仕事の裁量労働性(「制」ではない)を直視し、「裁量労働型の労働者
派遣」について議論しなければなりません。
また、それは不可能ではありません。
しかし、そのような議論がなされているという話は聞いたことが
ありません。


但し、弁護士や社会保険労務士の派遣を認める特区ができるという
話は聞いたことがあります。
これは、裁量労働型の労働者派遣の突破口になるかもしれません。



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[派遣と請負の間] 派遣、業務請負に関するバックナンバー
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これまで、派遣、業務請負について解説した記事は下記のとおりです。

第52号「人材派遣業は指揮命令権のレンタル業」
http://www.kei-it.com/sailing/52-041206.html

第53号「大手業務請負会社の業務請負」
http://www.kei-it.com/sailing/53-041213.html

第54号「準委任と人材派遣を分かつもの」
http://www.kei-it.com/sailing/54-041220.html

第55号「ソフトウェア業務請負の最大の問題点」
http://www.kei-it.com/sailing/55-041227.html

第57号「「人材登録型の業務請負」を狙う大手派遣会社」
http://www.kei-it.com/sailing/84-050718.html




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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

技術系:
・グーグルの衝撃
 (本を読むこと、ネットで読むこと)
・OSS(オープンソースを持ち上げる人々、オープンソースの実態)
・Linux台頭とSUN
・メーカからの請負、エンドユーザからの請負
 (品質管理、検収、瑕疵担保責任の違い)
・オブジェクト指向再論
・PMBOK
・SEO対策

外国系:
・中国は脅威か?

法務系:
・コンプライアンス
・取締役と執行役員

労務系:
・雇用契約、裁量労働制、個人事業主
・景気回復、新卒の採用難、2007年問題

営業系:
・売れる営業マン


次号は、6月5日発行予定です。

乞うご期待!!



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本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
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彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は2006年5月28日現在、494名です。


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