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第216号 2009/1/24 [グーグルの衝撃]
ITは英語と他言語との格差を拡大し固定する
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ソフトウェア業界 新航海術
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第216号 2009/1/24 『ITは英語と他の言語との格差を拡大し固定する』 ▼ まえがき ▼ [グーグルの衝撃] (1)6D−ビジョン
▼ [グーグルの衝撃] (2)図書館の本質は選択と集積 ▼ [グーグルの衝撃] (3)英語を母語とする人々の鈍感さ ▼
[グーグルの衝撃] (4)「ITと言語」を「6D−ビジョン」で見ると ▼ [グーグルの衝撃] (5)英語と他の言語との格差拡大・格差固定
▼ [グーグルの衝撃] (6)日本語は亡びるか
▼ おまけ:「なぜITは社会を変えないのか」を引用した主な記事
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まえがき *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
蒲生嘉達(がもうよしさと)です。
第215号で取り上げた「日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で」 (水村美苗著)について、もう少し話します。
【関連記事】 第215号:「日本語が亡びるとき」を読んで [Blog版]
http://www.gamou.jp/sailing/2009/01/post-53ea.html [HP版]
http://www.kei-it.com/sailing/215-090101.html
特に、グーグルなどによる大図書館計画について掘り下げます。
【関連記事】 新航海術の補足ブログ:グーグル「大図書館」計画の影の部分 http://www.gamou.jp/comment/2008/12/post-c352.html
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「なぜITは社会を変えないのか」(ジョン・シーリー
ブラウン、 ポール ドゥグッド著)という本があります。 ( http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532149312/keiitteanifty-22
)
1999年9月にアメリカで出版され、2002年3月に日本語版が出版されました。
通俗的なIT革命論を痛烈に批判した本です。
多くの未来学者は、ITによって社会が次のような方向に変わると説きます。
非マス化
(demassfication) 非集中化 (decentralization) 非国有化
(denationalization) 非専門化 (despecialization) 非仲介化
(disintermediation) 非集約化
(disaggregation)
これらは全て「D」で始まるので、「なぜITは社会を変えないのか」では 「6D−ビジョン」と呼んでいます。
「なぜITは社会を変えないのか」は「6D−ビジョン」が「複雑化する 世界を見通す強力なレンズだ」と認めながらも、実際にはそれとは 反対の流れもあると指摘しています。 ITによって逆にマス化や集中化が進行しているというように・・・。
詳しくは、「新航海術の補足」ブログの下記の記事を参照してください。
[新航海術の補足]「6D−ビジョン」と反対の流れ http://www.gamou.jp/comment/2009/01/6d-7900.html
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「なぜITは社会を変えないのか」は、約10年前に書かれたにも関わらず、 既に大図書館計画について非常に鋭い指摘をしています。
>
図書館は「収集庫」というよりはむしろ役に立つものを選択して > 集積しているところだ > (ジョン・シーリー ブラウン、ポール
ドゥグッド著 >
「なぜITは社会を変えないのか」より)
図書館を図書館たらしめているものは「保有すべきもの」を選ぶ 見識であり、大図書館の時代になっても既存の図書館の重要性は損な われないという主張です。
詳しくは、「新航海術の補足」ブログの下記の記事を参照してください。
[新航海術の補足]
図書館を図書館たらしめているもの http://www.gamou.jp/comment/2009/01/post-66d4.html
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「なぜITは社会を変えないのか」は非常に広範囲な議論を精緻に展開 していますが、「ITと言語」の問題については一言も触れていません。
「日本語が亡びるとき」が大図書館を言語との関連で論じているのに対し、 「なぜITは社会を変えないのか」では、既存の図書館と大図書館との 関係を論じているにすぎません。
このあたりが、水村美苗氏が言うところの「英語を<母語>とする 書き手の底なしの無邪気さと鈍感さ」なのでしょう。
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「ITと言語」の問題を、上記「6D−ビジョン」で見れば、非集中化、 非集約化に向かっているように見えます。
1960年代末、UNIXが誕生したとき、UNIXはASCIIコードしか扱えま せんでした。
現在は、ユニコードによって、漢字、カナ、ハングル、アラビア文字 など様々な言語の文字がインターネット上を行き交っています。
世界中のブログで最も使われている言語は日本語だそうですし (
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070406_technorati_blog/
)、 YouTubeでも日本語のコンテンツが大量に登録されています。
これのみを見ると、言語は「6D−ビジョン」のとおり、非集中化、 非集約化に向かっているように見えます。
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しかし、水村美苗氏が「日本語が亡びるとき」で指摘していることは、 「量の問題ではない」ということです。
英語の大図書館が、英語圏の人々のみならず世界中の非英語圏の インテリによっても利用されるということ、そして、そこにグーグル のようなランキング・システムが作用するということが重要なのです。
>
世界中の<叡智を求める人々>がアクセスし、何が、より<読まれる > べき言葉>であるかという序列を、もっとも<世界性>をもった、 >
もっとも厳しいところで、おのずから創り出す必然性がある。
> そして、その序列づけ=ランキング・システムは、永久革命のように >
変化して、<叡智を求める人>にとってもっとも意味があるもので > あり続ける必然性がある。 > >
(水村美苗氏著「日本語が亡びるとき」より)
それによって、英語と他の言語との格差は拡大し、且つ、その格差は 固定され、近代以降に成立した「普遍語−国語−現地語」という3階層は、 再び「普遍語(英語)−現地語」という近代以前の2階層に戻っていくと 水村美苗氏は予測しています。
これは、英語を母語とする人々、英語に近い西洋語圏の人々、 英語で学問してきた開発途上国のインテリからは出ない意見であり、 日本人ならではの意見だと思います。
ここに「日本語が亡びるとき」のオリジナリティがあると思います。
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上でも書いたとおり、「なぜITは社会を変えないのか」でも 「6D−ビジョン」は必ずしも間違いではないと認めています。
ITが非集中化、非集約化を進めるという面も確かにあるのです。
日本語の言語としての魅力を日本人が磨き続けようとしたなら、 ITにはそれを助ける面もあるはずです。
日本人が日本語を磨き続けることができるなら、日本語は「普遍語」 にはなり得ないとしても、「国語」であり続けるのではないでしょうか。
しかし、ほうっておいたら、日本語は「現地語」に転落し、その意味で 「日本語は亡びる」でしょう。
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おまけ:「なぜITは社会を変えないのか」を引用した主な記事 *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
「なぜITは社会を変えないのか」を引用した主な記事を紹介します。
第46号:超巨大企業の時代 [Blog版]
http://www.gamou.jp/sailing/2004/10/post_d926.html [HP版]
http://www.kei-it.com/sailing/46-041025.html
第142号:グーグルの検索やアマゾンの推薦は中立か? [Blog版]
http://www.gamou.jp/sailing/2006/08/post_8f6e.html [HP版]
http://www.kei-it.com/sailing/142-060828.html
第143号:ロングテール [Blog版]
http://www.gamou.jp/sailing/2006/09/post_70c5.html [HP版]
http://www.kei-it.com/sailing/143-060904.html
第196号:eXtreme
Programming(エクストリーム・プログラミング) [Blog版] http://www.gamou.jp/sailing/2007/12/extreme_program_b60b.html [HP版]
http://www.kei-it.com/sailing/196-071203.html
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