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第217号 2009/2/18 [労働法の森]
フレックスタイム制と裁量労働制
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ソフトウェア業界 新航海術
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第217号 2009/2/18 『フレックスタイム制と裁量労働制』 ▼ まえがき ▼ [労働法の森] (1)3種類の基本的な労働時間制度の比較
▼ [労働法の森] (2)原形そのものには決まった呼び名がない ▼
[労働法の森] (3)情報通信業では23.3%の企業がフレックスタイム制度 ▼ [労働法の森] (4)フレックスタイム制度の欠陥 ▼
[労働法の森] (5)固定的時間外労働手当 ▼ [労働法の森] (6)情報通信業では22.3%の企業が専門業務型裁量労働制 ▼
[労働法の森] (7)裁量労働制度の欠点
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まえがき *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
蒲生嘉達(がもうよしさと)です。
1年半ぶりの「労働法の森」シリーズです。
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第190号「3種類の基本的な労働時間制度」で書いたことを発展させて 表形式でまとめてみました(↓)。これを参照しながら、読んでください。
「3種類の基本的な労働時間制度の比較」 http://www.kei-it.com/sailing/2009/3types.htm です。
関連記事:第190号「3種類の基本的な労働時間制度」 [Blog版]
http://www.gamou.jp/sailing/2007/08/post_7666.html [HP版]
http://www.kei-it.com/sailing/190-070806.html
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第190号「3種類の基本的な労働時間制度」で書いたとおり、 ソフトウェア会社の技術職の労働時間制度は下記の3つの制度の どれかが採用されています。
・固定時間制度 ・フレックスタイム制度 ・裁量労働制度
尚、「固定時間制度」という用語は一般的ではありません。
始業時間と就業時間を決め、それに対して1日単位に遅刻、早退を 計算していく従来型の制度を指していますが、労働法の本では 特に○○制度という呼び方はされていません。
それが原形となり、その変異体として、変形労働時間制度や みなし労働時間制度が生まれてきますが(注)、原形そのものには 決まった呼び名がありません。
(注)フレックスタイム制度は変形労働時間制度の一種、 裁量労働制度はみなし労働時間制度の一種です。
呼び名がないと比較しにくいので、ここでは「固定時間制度」と 呼んでいます。
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厚生労働省が平成20年10月に発表した「平成20年就労条件総合調査 結果の概況」(有効回答社数4,047)によれば、
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/08/3a.html フレックスタイム制度の採用企業数割合は4.9%、適用労働者数割合は 7.0%です。
しかし、情報通信業でのフレックスタイム制度採用企業数割合は23.3%、 適用労働者数割合は22.7%です。
「3種類の基本的な労働時間制度の比較」
http://www.kei-it.com/sailing/2009/3types.htm の 「フレックスタイム制度×適している仕事」を見れば、 情報通信業でフレックスタイム制度の導入率が高い理由が分かるでしょう。
尚、余談ですが、このような統計では、ソフトウェア業は「情報通信業」 に分類されます。
関連記事:第105号「新産業分類ではソフトウェア業はサービス業ではない」 [Blog版]
http://www.gamou.jp/sailing/2005/12/post_ab8f.html [HP版]
http://www.kei-it.com/sailing/105-051212.html
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フレックスタイム制度には次の長所があります。
・自分のタイプ(朝型、夜型など)に合わせて、勤務時間をシフトできる。 ・ラッシュアワーを避けられる。 ・体調不良、家庭の用事などで1日の労働時間が減っても、別の日に 取り戻すことが容易。
しかし、上述の「フレックスタイム制度採用企業数割合23.3%」という 数字は、フレックスタイム制度の歴史の長さから考えるとけっして大きな 数字ではありません。
フレックスタイム制度が意外と普及しない理由は、フレックスタイム 制度は本当は運用が難しいからです。
フレックスタイム制度の運用が難しい最大の理由は、フレックスタイム 制度を導入すると「時間外労働には申請・承認が必要」という原則が を守れなくなるということです。
ソフトウェア開発のように時間と成果が比例しない仕事は、固定時間 制度の下でも、「時間外労働には申請・承認が必要」という原則が ゆるくなります。
しかし、フレックスタイム制度には「時間外労働には申請・承認が必要」 という原則を守れない仕組みが内在しているのです。
この点については長くなるので、新航海術の補足ブログの下記記事を 参照してください。
[新航海術の補足ブログ] フレックスタイム制度で時間外労働の申請・承認が機能しない理由 http://www.gamou.jp/comment/2009/02/post-63a9.html
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フレックスタイム制度を導入すると「時間外労働には申請・承認が必要」 という原則が崩れ、会社側が時間外労働をコントロールできなくなります。
その欠陥を修正する手段として、固定的時間外労働手当という考え方が 出てきます。 詳細は新航海術の補足ブログの下記の記事を参照してください。
[新航海術の補足ブログ] 固定的時間外労働手当の背後にあるもの http://www.gamou.jp/comment/2009/02/post-1768.html
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また、時間と成果が比例しない仕事における時間外労働問題のもう一つの 解決策が裁量労働制度です。
裁量労働制では、時間外労働手当そのものを廃止します。 (但し、休日出勤手当や深夜労働手当はあります。)
裁量労働制度には専門型と企画型がありますが、ソフトウェア会社の場合、 ほとんどが専門型なので、ここでは専門型のみ扱います。
再び、厚生労働省の「平成20年就労条件総合調査結果の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/08/3a.html を見てみましょう。
専門業務型裁量労働制の採用企業数割合は2.2%、適用労働者数割合は 1.3%です。
しかし、情報通信業に限って見ると採用企業数割合は22.3%です。 フレックス制度と同じくらい普及していることに少し驚きます。
但し、適用労働者数割合は10.2%です。
採用企業数割合がフレックス制度とほぼ同じなのに、適用労働者数割合が 半分になっているのは、従業員の少ない企業での採用が多いという ことでしょうか。
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フレックスタイム制度に欠点があるように、裁量労働制度にも欠点が あります。
「3種類の基本的な労働時間制度の比較」
http://www.kei-it.com/sailing/2009/3types.htm の「裁量労働制度×欠点」を参照してください。
また、経験の少ない技術者も含めて全員に適用することには無理があります。
汎用機のCOBOLプログラマのように、純粋にプログラミングをするだけの プログラマにも適用できません。 オープン系のプログラマは、多くの場合、作業の範囲が上流工程から 下流工程まで含まれるので、専門業務型裁量労働制を適用することは できるでしょうが、ほんの少しグレーな部分も残るでしょう。
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