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ソフトウェア業界 新航海術
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第248号 2013/7/8 『中途入社者の年次有給休暇』
▼ まえがき
▼ (1)既に語りつくされたテーマ
▼ (2)労働基準法の規定
▼
(3)平成25年4月1日入社者の場合
▼ (4)4月1日を基準日とする理由
▼ (5)入社日と基準日との間隔によって、有利・不利が生じる
▼
(6)9月30日に入社した場合
▼ (7)10月1日に入社した人
▼ (8)入社日による不公平を是正する方法
▼
(9)9月入社者の有利さを低減することは不可能
▼ (10)各社の実情に合わせて、アレンジする上で
▼
あとがき
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まえがき
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こんにちは。蒲生嘉達(がもうよしさと)です。
今回は3年半ぶりの「労働法の森シリーズ」です。
中途入社者の年次有給休暇について話します。
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(1)既に語りつくされたテーマ
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「中途入社者の年次有給休暇」は、既に語りつくされたテーマです。
しかし、私はこれまで正確に理解していたわけではありません。
新卒採用であっても中途採用であっても、ほとんどの社員が年次有給休暇
を使い切らないので、それほど重要なテーマではなかったからです。
このたび詳細まで考える機会があったので、整理してみました。
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(2)労働基準法の規定
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よく知られているとおり、労働基準法では年次有給休暇について次のように
規定されています。
(1)6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、
又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。(第39条第1項)。
(2)さらに1年間、8割以上継続出勤するごとに有給休暇は10労働日に加えて
勤続2年6箇月目まで1労働日ずつ加算して付与され、勤続3年6箇月目からは
2労働日ずつ加算して付与される。勤続6年6箇月経過時には20労働日に達し、
以降は1年間の継続勤務ごとに20日を付与すればよい(第39条第2項)。
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(3)平成25年4月1日入社者の場合
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労働基準法で定められている年次有給休暇は、平成25年4月1日入社者の場合、
次のとおりです。
平成25年4月1日:入社
平成25年10月1日:10日付与
平成26年10月1日:11日付与
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その後毎年10月1日に年次有給休暇が新たに付与されます。
この付与日のことを「基準日」と呼びます。
労働基準法では基準日は入社日に依存します。
したがって、中途入社者の基準日はバラバラになります。
しかし、多くの企業は次のようにしています。
平成25年4月1日:入社
平成25年10月1日:10日付与(会社によっては入社時や試用期間満了時)
平成26年4月1日:11日付与
^^^^^^
4月1日を基準日としているわけです。
これだと、初年度の付与日数が10日、次年度が11日なので、この方が
むしろ自然で、これが普通だと私は思っていました。
これが「労働基準法以上のことである(11日付与が半年前倒し)」
という認識は、つい最近までありませんでした。
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(4)4月1日を基準日とする理由
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多くの企業が4月1日を基準日としている理由は、正確には分かりません。
大企業でも中堅企業でも「4月1日一斉採用が当たり前」が前提にあり、
「労働基準法どおり10月1日を付与日とすると初年度が1年半で10日となり、
それでは少なすぎる」という感覚があったのかもしれません。
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(5)入社日と基準日との間隔によって、有利・不利が生じる
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さて、ここから、本題の「中途入社者の年次有給休暇」に入ります。
上述のとおり、労働基準法では基準日は入社日に依存します。
したがって、中途入社者の基準日はバラバラになります。
しかし、事務処理が煩雑になるため、ほとんどの企業は、統一した
基準日を中途入社者にも適用しています。
ここで、基準日と入社日(正確には入社後半年日)との間隔によって、
有利・不利が生じるという問題が発生します。
最も差が出るのが、入社後半年日を基準日の直前に迎える9月末入社者と
入社後半年日が基準日と一致する10月1日入社者です。
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(6)9月30日に入社した場合
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9月30日に入社した人は、労働基準法では次のようになります。
平成25年9月30日:入社 → 平成26年3月29日で6ヶ月経過
平成26年3月30日:10日付与
平成27年3月30日:11日付与
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一方、基準日を4月1日とした場合、次のようになります。
平成25年9月30日:入社 → 平成26年3月29日で6ヶ月経過
平成26年3月30日:10日付与
平成26年4月1日:11日付与
~~~~~~~
労働基準法に比べて、11日付与が約1年間前倒しになることが分かります。
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(7)10月1日に入社した人
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10月1日に入社した人は、労働基準法では次のようになります。
平成25年10月1日:入社 → 平成26年3月31日で6ヶ月経過
平成26年4月1日:10日付与
平成27年4月1日:11日付与
~~~~~~~
そして、これは基準日を4月1日としている会社でも同じです。
労働基準法の基準日と会社の基準日が一致するからです。
平成25年9月30日入社者は平成26年4月1日時点で、合計21日の年次有給休暇
をもらえます。
一方、平成25年10月1日入社者が平成26年4月1日時点でもらえる
年次有給休暇の日数は10日です。
入社日が1日違うだけで、11日の差が出ます。
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(8)入社日による不公平を是正する方法
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入社日による不公平を是正する方法として、「当初だけ2回の基準日を設ける」
「法定外の年休を付与する」などが考えられています。
これらの詳細は他サイトを参照してください。
例:年休を付与する基準日の考え方
http://blog.goo.ne.jp/akiyam_1949/e/abe8a574ed72d2a8e751b4d6e5619960
しかし、私は、それらの方法を最初に聞いたとき、奇妙な感じがしました。
それらの方法は10月入社者に対する不利を補うことはしていますが、
9月入社者に対しては何もしていないからです。
4月入社者を基準にして、9月入社者が有利すぎるなら、その有利さを
低減する対策を対策を考えるべきではないかと感じました。
9月30日入社者に対しては、平成26年3月30日の10日付与を例えば5日にするとか、
あるいは、平成26年4月1日の11日付与を例えば5日にするとか・・・。
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(9)9月入社者の有利さを低減することは不可能
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しかし、少し考えると、9月入社者の有利さを低減することは不可能で
あることが分かりました。
平成25年9月30日入社なら、平成26年3月30日の10日付与は労働基準法で
決められているので、日数を減らすことは不可能です。
それでは平成26年4月1日の11日付与を減らすことは可能でしょうか?
「3月30日に10日与えたのだから、4月1日は5日でいいだろう」というように・・・。
平成26年4月1日の11日付与を減らすこと自体は、直接的には
労働基準法違反ではありません。
例えば「平成26年4月1日は5日のみ付与」でも構いません。
問題はそうした場合に残りの6日をいつ付与するかです。
上述したとおり、労働基準法では、平成25年9月30日入社者には、
平成27年3月30日に11日を付与しています。
したがって、平成27年3月30日までに残りの6日を与えなければなりません。
しかし、基準日が4月1日であり、次の基準日は平成27年4月1日なので、
平成27年3月30日までに残りの6日を与えることができません。
したがって、基準日が4月1日であることを前提にすれば、平成26年4月1日の
11日付与を減らすことは、平成27年3月30日時点で労働基準法違反になるのです。
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(10)各社の実情に合わせて、アレンジする上で
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今回は9月入社と10月入社の差のみ取り上げましたが、実際には、
11月から3月入社の扱いも検討する必要があります。
様々な問題の対策としては、既に語りつくされているとおり、
「当初だけ2回の基準日を設ける方法」「法定外の年休を付与する方法」で
解決するしかないでしょう。
しかし、各社の実情に合わせて、アレンジする上で、今回述べたことの
理解が必要となります。
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