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第255号 2015/12/11 『正常時の借入の弊害』
▼ まえがき
▼ (1)下町ロケットの佃製作所の場合
▼ (2)中小ソフト会社の場合
▼ (3)現金不足に陥る4つの理由
▼ (4)非常時の借入
▼ (5)将来の利益を返済が食いつぶす
▼ (6)正常時の借入
▼ (7)「正常時の借入」の弊害
▼ あとがき
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まえがき
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こんにちは。蒲生嘉達(がもうよしさと)です。
メルマガの発行は半年ぶりです。
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そちらも是非ご覧ください。
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(1)下町ロケットの佃製作所の場合
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TBSドラマ「下町ロケット」は町工場「佃製作所」の佃社長(阿部寛)と
社員達が奮闘するドラマです。
第1話では、大口取引先から取引打ち切りを一方的に通知され、売上高が激減し、
資金繰りが悪化します。
そのため、佃社長と殿村経理部長(立川談春)が銀行に追加融資を
お願いに行くのですが、既に巨額の借入があるので、冷たくあしらわれます。
その後競合大手との特許紛争が発生し、・・・と物語は続いていきます。
工場は巨額の設備投資・研究開発費が必要です。
中でも佃製作所のような独立系の中小企業は資金を銀行からの融資に
頼ることになります。
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(2)中小ソフト会社の場合
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一方、中小ソフト会社の場合、佃製作所ほどには設備投資・研究開発費は
必要ありません。
無借金、あるいは、極めて短期的・限定的な借入で十分だというのが、
私の持論です。
これは、第247号でも書いたことですが、今回はもう少し分かりやすく
書き直します。
第247号(2013/4/13)無借金経営
Blog版: http://www.gamou.jp/sailing/2013/04/247130413-617c.html
HP版:http://www.kei-it.com/sailing/247-130413.html
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(3)現金不足に陥る4つの理由
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中小ソフト会社の場合、現金不足に陥り、借入が必要となる主な理由は次の4つです。
(A)顧客倒産などによる貸し倒れ
(B)プロジェクトの失敗による赤字
(C)仕事減少による赤字
(D)売掛金の回収よりも、給料などの支払が先に出る
(A)(B)(C)(D)の順で非常時から正常時に近づきます。
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(4)非常時の借入
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(A)顧客倒産などによる貸し倒れ
これは相手側に原因のある交通事故の被害者になったようなものです。
遭遇しないよう注意しなければなりませんが、それでも遭遇してしまう
可能性はあります。
(B)プロジェクトの失敗による赤字
これは見積やプロジェクト管理の失敗が主な原因です。
自社に非がある場合もあるし、顧客に非がある場合もあります。
失敗しないように心掛けなければなりませんが、残念ながら、
ソフトウェア請負開発ではしばしば発生することです。
(C)仕事減少による赤字
大口顧客との取引が打ち切られたというような会社個別のケースもあるし、
2008年から2012年位まで続いた不況のように業界全体のパイが
縮小する場合もあるでしょう。
ソフト会社の売上原価のほとんどは人件費であり、社員が減らない限り、
売上が減っても原価は減らず、資金不足となります。
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(5)将来の利益を返済が食いつぶす
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(A)(B)(C)が原因の借入は明らかに悪い借入です。
将来の利益を返済が食いつぶすからです。
やむをえず借入せざるを得ない場合もあるでしょうが、
それはあくまでも非常時であり、極力早く返済しなければなりません。
あるいは、非常時に強くなるよう、自己資本(内部留保や資本金)を
増やしていく必要もあります。
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(6)正常時の借入
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(D)売掛金の回収よりも、給料などの支払が先に出る
これはソフト会社の宿命とも言える性格です。
(A)(B)(C)が理由の借入と
(D)が理由の借入とはかなり異なります。
前者はキャッシュフロー上も会計上も赤字なのに対し、後者は
キャッシュフロー上は赤字でも会計上は黒字です。
したがって、銀行は必ず貸してくれます。
(A)(B)(C)が「非常時の借入」なのに対し、(D)は「正常時の借入」
とも言えます。
売上の成長によって現金需要が増えたが、自己資本がそれほど
増えていないから現金不足になったというだけなので、売上が減れば
自然と消える借金です。
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(7)「正常時の借入」の弊害
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「正常時の借入」と言っても次の3つの弊害があります。
・利息支払や保証金の負担
・財務処理の複雑化
・借入に対する意識が甘くなる
また、理屈の上では「売上が減れば自然と消える借金」ですが、
実際には売上が減っても借金が減らないことが多いです。
なぜなら、「売上が減る」ということは、「(C)仕事減少による赤字」
という状態であり、資金が返済に回らないのです。
したがって、(D)の借入に対しても慎重であるべきであり、
成長に伴う現金需要の伸びは自己資本(内部留保・増資)で補うのが理想です。
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